【動画】80トンのファラオ像、4度目の引越し

「最も偉大なファラオ」ラムセス2世像が、建設中の大エジプト博物館へ

2018.01.30
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【動画】ラムセス2世の巨像、大エジプト博物館へ引っ越し(解説は英語です)

 21世紀のエジプトにおいても、ファラオ(古代エジプト王)の移動は壮麗だ。1月25日、マーチングバンドと軍の騎馬隊に護衛されながら、ラムセス2世の巨大な像が、過去3200年間で4回目の旅に出た。

 巨像の今回の旅は、最短の旅でもある。10年余り置かれていたギザの一時保管用建物から約400メートルの距離を運ばれ、新しい大エジプト博物館の入口の吹き抜けの空間に搬入された。ここが最後の住まいとなる予定だ。

 その圧倒的な大きさゆえに、この像は少し動くだけでも注目を集める。エジプト第19王朝のファラオをかたどった花崗岩の彫像は重さ83トン、高さ約11メートル。特製の金属の枠で保護され、2つつなげたトレーラーの荷台に載せられて、オレンジ色のトラックにゆっくりと引かれて移動した。

 ラムセス2世は、古代エジプトで最も力を持ったファラオと考えられている。紀元前1279年頃から1213年頃までの治世で、ヌビア、シリア、カナンに侵攻し、宿敵ヒッタイトとカデシュの戦いで激突した。(終戦時に交わされた条約は、世界初の和平協定として知られる)。(参考記事:「要塞都市で発見された古代エジプト壁画」

ギャラリー:80トンのファラオ像、4度目の引越し 写真6点(画像クリックでギャラリーページへ)
特製の枠に納められ、ラムセス2世の像が、新設の大エジプト博物館に移される。(PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRETT, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 ラムセス2世は、巨大建造物を残すことにも熱心だった。なかでも、テーベにある壮大な葬祭殿ラメッセウムや、アブシンベル神殿などが有名だ。後者は、玉座についたラムセス2世の高さ20メートル近い像が入口に並ぶ。(参考記事:「圧倒的スケールで迫る、古代の巨大岩石建造物 写真8点」

忘れられた巨像

 大エジプト博物館に到着した巨像は、これまで長く回り道をしてきた。紀元前13世紀に、アスワンの採石場から古王国時代の首都だったメンフィスのプタハ大神殿に運ばれた。しかし、それから数千年間、砂に埋もれて忘れられていた。イタリア人のエジプト学者、ジョバンニ・バッティスタ・カビリアが像を再発見したのは、1820年のことだ。像は側面を下にして倒れ、6つに割れていた。カビリアは発見した遺物をイタリアの公爵に贈ろうとしたが、巨大な彫像を動かすのは困難で費用もかかることを理由に断られた。後に、エジプトを統治していたオスマン帝国の高官が大英博物館に同様の申し出をしたが、似たような理由で拒まれた。

 ラムセス2世の巨大な像は、カイロの40キロ南、ナイル川西岸の古代都市メンフィス(現在のミート・ラヒーナ近郊)にある廃墟に130年以上放置された。像が動かされたのは1954年。エジプトのガマール・アブドゥル・ナーセル大統領が、カイロに移すよう指示したのだ。立憲君主制を廃止した1952年の革命から2周年を祝い、また古代エジプトの遺産を広く示すためだった。壊れていた像は戦車で運搬された(偉大なファラオが通過していくとき、ギザ動物園のライオンが一斉にほえたと言われる)。像は再び組み立てられ、修復され、真っすぐに立てられて、カイロ中心部の駅前にあるバブ・アル・ハディド広場の中央に据えられた。

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