温暖化でウミガメの99%がメスに、オーストラリア

グレート・バリア・リーフ北部のアオウミガメ、世界規模の問題の恐れも

2018.01.10
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一世代の間に急激に変化する海水温

 今のところ、その答えは誰にもわからない。

 ウミガメのオスは、通常複数のメスと交尾し、また交尾の頻度もメスより高いため、メスの数がわずかに多い方が釣り合いが取れるのかもしれない。世界75カ所のウミガメ繁殖地を調べた最近のある調査では、メスとオスの比率がおおよそ3対1であった。100年前からメスの方が多かったという個体群もある。だが問題は、それが今どこまで変化しているのか、そしてどこまで変化すれば危険なのかということだ。

 ウミガメはおよそ1億年前から存在し、その間に地球の気温は上下を繰り返してきた。さらに、捕獲や密猟、汚染、病気、開発、生息地の消失、漁業による混獲などによって数を減らし続けた何十年という苦難の時代を経て、このところようやく世界各地で多くの個体群が回復の兆しを見せている。(参考記事:「環境悪化のグレート・バリア・リーフでジュゴン増加」

 だがジェンセン氏は、「気温の変化は驚くほど激しくなっています」と懸念する。「進化とは、何世代もかけて環境に適応していく現象です。50年以上も生きるウミガメにはそれだけ長い時間が必要だというのに、今は一世代の間に環境が激変しているのです」(参考記事:「美しい写真で「進化の神秘」を目撃する」

 レイン島だけを見ても、海面上昇で巣に海水が浸入して卵が窒息したり、海岸の浸食で小さな崖ができ、転落したウミガメが裏返ったまま自力で起き上がれずに死んでしまったりする事故が増えている。オーストラリア政府は巨額の予算をつぎ込んで、ウミガメがすみやすいよう島の環境回復に取り組んでいる。

グアム、ハワイ、サイパンでも

 世界には7種のウミガメ(アオウミガメ、アカウミガメオサガメタイマイ、ヒラタウミガメ、ヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメ)が生息しているが、その全てにおいて、メスとオスの比率が気候変動の影響を受けるだろうと、科学者は少なくとも35年前から予想してきた。卵は気温の変化に極めて敏感で、わずか数度上昇しただけで、オスが1匹も生まれない事態も起こりうる。そうなれば、個体群が全滅する危険性がある。もっと悪いことに、気温が上がりすぎれば、巣の中で文字通りゆで卵になってしまうことすらある。

 過去の研究では、過剰な性の偏りは21世紀後半になるまで脅威にはならないだろうという意見が大半で、現実に今何が起こっているのかについての研究はほとんどされてこなかった。2年前に、米カリフォルニア州サンディエゴに生息するアオウミガメの小集団を調査したアレン氏は、65%がメスだったことを突き止めたが、若いアオウミガメだけに限ってみれば、メスの割合は78%にまで増えていた。また、コスタリカのオサガメ、米フロリダや西アフリカなどのアカウミガメにも、メスへの偏りが見られた。しかし、今回のジェンセン氏とアレン氏の研究ほど大規模な個体群を調査した研究はない。

 とはいえ、オスの数がどこまで減少すれば危険と言えるのかを判断するのはやはり難しい。答えは、種や地域によって異なる。性を決定する巣の温度も、それぞれの地域の要因に左右される。たとえば、西インド洋の英領チャゴス諸島では、砂の温度を下げる激しい雨や、海辺に生える木々の木陰、そして、そうした海辺からあまり離れられない狭い砂浜など、いくつかの要因が重なってタイマイの性比が健全なレベルに保たれている。逆にカリブ海の島では、森林伐採で砂浜に日陰がなくなり、オスが減少してウミガメが危機にさらされていると科学者は警告している。

 アレン氏とジェンセン氏は、引き続き別の海域でも、同様の方法でウミガメの調査を行う予定だ。既に、グアム、ハワイ、サイパンでサンプルを集めている。

「グレート・バリア・リーフの北部は、世界最大のウミガメの個体群がいる場所のひとつです。既に数が著しく低下している他の個体群にこの問題を当てはめてみた時のことを想像すると、空恐ろしい思いがします」と、アレン氏は懸念している。

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海に帰るアオウミガメの赤ちゃん。(Photograph by Norbert Wu, Minden Pictures, National Geographic Creative)

文=Craig Welch/訳=ルーバー荒井ハンナ

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