海賊「黒ひげ」が読んだ探検本?沈没船から発見

数センチの紙片から書籍を特定、ロビンソン・クルーソーの元ネタも収録

2018.01.11
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 有力な手がかりを得たQAR研究所は、印刷されたテキストの歴史に詳しい英グラスゴー大学のジョアンナ・グリーン氏に助言を仰いだ。数ある候補地の中から最初に外されたのは米ハワイ州の「Hilo」だった。ここは1778年のジェームズ・クックの探検以前には、欧州の文献には登場しない。次にグリーン氏の指摘により、古い英語の文献で言及されている、南米ペルー沿岸地方のスペインの植民地「Ilo」が検討された。

 この場所についての最も古い文献は、太平洋を航海する最中に「Ilo」の襲撃に参加した英国人の船乗りによるものだ。ケニヨン氏によると、17~18世紀には、スペインの植民地を略奪する話が英国人の間で大いに人気を博していたという。(参考記事:「英海軍との戦い、黒ひげが残した遺物」

ロビンソン・クルーソーの元ネタも

 しかし、この文献もクイーン・アンズ・リベンジ号から見つかった本の切れ端とは一致しなかったため、調査員らは「Ilo」の略奪に言及している他の資料を探した。そしてついに本の断片の出所が、エドワード・クックによる『A Voyage to the South Sea, and Round the World, Perform’d in the Years 1708, 1709, 1710 and 1711』の初版の177~178、183~188ページだということを突き止めた。

 同書は、ウッズ・ロジャーズ船長率いるデューク号とダッチェス号という2隻の船による航海において、クックが自ら体験したことを記したものだ。ロジャーズもまたこの航海に関する本を出版しており、どちらの本にも、アレクサンダー・セルカークという名の、無人島で4年間暮らした男の救出についての言及がある。ダニエル・デフォーは1719年、この救出劇にヒントを得た小説『ロビンソン・クルーソー』を出版している。(参考記事:「ロビンソン・クルーソー「実在神話」の真相」

大砲の薬室から回収し、洗浄・乾燥させた紙片。文字が書かれているのが確認できる。(PHOTOGRAPH COURTESY N.C. DEPARTMENT OF NATURAL AND CULTURAL RESOURCES)
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 歴史的資料から、多くの海賊団には文字を読める者が何人か所属していたと考えられている。航海士は海図を読み解く必要があったはずだ。ケニヨン氏によると、拿捕した船から海賊らが本を盗み出したという記録があり、さらには黒ひげが付けていた日記が存在するという説もあるが、これは本人の死後に盗み出されたという。(参考記事:「名作『白鯨』の元ネタは、もっと壮絶だった」

 QAR研究所のチームは現在、ノースカロライナ州自然文化財課公文書記録局、ウィンターサー/デラウェア大学芸術保存プログラムと協力して、極めて繊細な紙片の保存に取り組んでいる。2018年には、黒ひげの死後300年を記念したイベントの一環として、難破船からの発見に関する展示が予定されている。

 クイーン・アンズ・リベンジ号からは本の紙片の他にも、釣鐘、装飾用の剣、繊細な造りの懐中時計などの貴重な品々が見つかっている。同船から回収された約10万点の遺物のうち4万点は、今も保存作業を待っている状態で、ケニヨン氏はこの先も重要な発見があることを確信している。

「これ以外にも、船の半分はまだ発掘されずに海の底で眠っているのです」とケニヨン氏は言う。(参考記事:「18世紀の海賊が食べていたものは?」

【この記事の画像をもっと見る】海賊「黒ひげ」の沈没船から発掘された品々 写真8点

文=Kristin Romey/訳=北村京子

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