特集フォトギャラリー5点(画像クリックでリンクします)
オオサイチョウ
Buceros bicornis
大きな嘴とかぶとのような突起をもち、翼開長(広げた両翼の長さ)は2メートルにもなる。東南アジアの密林の空に君臨する王者だ。尾羽の近くの分泌腺から出る黄色い脂を、黒と白の羽毛に塗る。ヒューストン動物園(米国)PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE

 鳥はすごい。

 まず挙げたいのは、鳥たちがすむエリアの途方もない広さだ。地球上の鳥をすべて見ようとすれば、世界中を訪れなければならない。鳥は海と陸のあらゆる場所をすみかとし、ほかの生き物が生きていけないような過酷な環境にも進出している。

 また、鳥は人間っぽい。見た目こそ似ていないが、見方によってはほかの哺乳類より人間に近いくらいだ。手の込んだマイホームを作ってそこで子育てするし、冬に暖かい所へ移動して過ごすこともある。

 オウムは鋭い洞察力の持ち主で、なかにはチンパンジーも苦戦するような複雑なパズルを解くものもいる。カラスは遊びが大好きだ。YouTubeで見つけた動画では、ロシアのカラスがプラスチック容器の蓋をそり代わりにして雪の積もった屋根をすべり下り、蓋をくわえて飛んで戻ると、再び滑降を楽しんでいた。

 同時に鳥は、人間がやりたくても夢の中でしかできない芸当を軽々とやってのける。言うまでもなく、それは空を飛ぶことだ。タカは上昇気流に乗って空高く舞うし、ハチドリはホバリングの名手だ。ヨーロッパアマツバメは、一度も着地せずに1年近く飛び続けて欧州とサハラ砂漠以南のアフリカを往復し、寝食だけでなく、換羽まで空中で済ませてしまう。アホウドリの若鳥は最長で10年も海の上で過ごし、ようやく繁殖地に降り立つ。

環境に合わせて生きることしかできない

 ただし人間にあって、鳥にない重要な能力が一つある。環境をコントロールする能力だ。鳥は湿地を保全できないし、漁場を管理することもできない。できるのは、環境の変化に対し、長い時間をかけた進化のなかで適応していくことだけだ。

 ところが今、人類が地球環境を急速に改変し、鳥の進化がそれに追いつかなくなっている。カラスやカモメはごみ捨て場で、ヒヨドリは都市の公園で食べ物をあさって増えるかもしれないが、ほかの大半の鳥の未来は人間が保護に本腰を入れるかどうかにかかっている。

 なぜ野鳥は大切なのか。その理由の一つとして、人工的な環境で暮らす私たちにとって、鳥は自然に触れる機会を与えてくれる最後の、そして最高の存在だということがある。鳥は、恐竜と共通の祖先をもち、現代の環境に見事に適応して生きている「小さな恐竜」ともいえる。鳥ほど広い範囲に分布し、人類が誕生する以前の地球の姿を生き生きと伝えてくれる生物はほかにいない。

 米国議会は1918年、カナダと締結した条約に基づいて、渡り鳥保護条約法を承認した。ナショナル ジオグラフィックはこの法律の制定100周年を記念して、全米オーデュボン協会、バードライフ・インターナショナル、コーネル大学鳥類学研究所の協力のもと、2018年を「鳥の年」と宣言。1年を通じて鳥をテーマにした記事をお届けする。

※ナショナル ジオグラフィック1月号特集「鳥はなぜ大切なのか?」では、鳥のすごさを語るとともに、美しい鳥たちのポートレート集を掲載しています。

文=ジョナサン・フランゼン