【動画】深海生物の知られざる食物網(字幕は英語です)

 地球の主要な生態系のうち、最大の場所であるにもかかわらず、ほとんど知られていない深海。だが、遠隔操作探査機によって撮影されたおよそ30年分の動画データから、誰が何を食べているかについてのより正確で多様な関係が明らかになった。この結果は、12月6日付けの科学誌「英国王立協会紀要B(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。

 これまで、深海生物が何を食べているのかを知るには、生物を切り裂いて胃の内容物を直接見る方法に頼ってきた。今回の研究を行なったモントレー湾水族館研究所の海洋研究者であるアネラ・チョイ氏いわく「古くさいやり方」だ。(参考記事:「【動画】目玉がかわいすぎる生き物、深海で見つかる」

 また、安定同位体や脂肪酸など自然界に存在する生化学的トレーサー(追跡子)を測定する方法もある。これは主に、捕食者の主要な餌を調べるときに役立つ。(参考記事:「冷戦中の核実験が、象牙密猟の証拠を提示」

 だが深海のクラゲに関しては、何を食べ、何に食べられ、食物網でどのような役割を果たしているのかを調べるのは難しい。クラゲの体はほとんどが水分でできており、食べられればあっという間に消化されてしまうし、捕まえようとすれば簡単に壊れてしまうからだ。

 そこでチョイ氏の研究チームは、約30年にわたって同研究所が撮りだめてきた動画を詳しく調べることにした。

 他の海洋生物と違って、クラゲは探査機の光や音から逃げないため、捕食の様子を直接観察できる。おまけに透明度の高いクラゲなら、腹の中まで透けて見える。(参考記事:「世界最深のマリアナ海溝、映像をライブ配信、奇妙な光るクラゲも」

「恐ろしく長い時間がかかりました」とチョイ氏は言うが、おかげで、カリフォルニア沖における深海の食物網で、クラゲがカギとなる捕食者のひとつであることが明らかになった。たとえば、ある種のクラゲは22種もの海洋生物を食べており、これまで考えられていたよりも深く食物網に関わっていた。クラゲの重要度は大型魚やイカに匹敵するという。(参考記事:「【動画】幽霊のような深海魚を発見、おそらく新種」

餌がわからなければ保護もできない

「ひとつひとつの捕食行動を、独立した物語として考えています」。研究チームの一員であるスティーブン・ハドック氏は言う。つまり、観察した食う食われるの関係のそれぞれが全て深海を理解する上で役に立つということだ。

 特にハドック氏の印象に残っているのは、クラゲばかり食べていたタコの動画である。タコは、足を使って獲物を完全に包み込んでしまった。(参考記事:「【動画】深海タコ、食べたクラゲの触手を武器に?」

 また別の動画には、クラゲに捕らえられようしているイカが、自分とそのクラゲよりもはるかに大きな魚を捕らえようとしている様子が撮影されていた。めったに見ることのない生き生きとした海の世界がそこにはあった。(参考記事:「【動画】イカがイカを一瞬で捕獲、共食い?」

 深海の食物網を理解することは、保全活動に重要であると、チョイ氏とハドック氏は口をそろえる。

 しかも、人の住む場所からは遠く、ほとんど知られていないものの、海洋汚染の影響はこんなところにまで及んでいる。2017年2月に発表された研究で、地球上で最も深いマリアナ海溝ですら、驚くほど汚染されていることが明らかになった。(参考記事:「マリアナ海溝の深海生物、中国最悪の川超える汚染」

「食物網は、地図のようなものです。水の表面で繁殖する小さな植物がなければ、クジラも海で生きてはいられません。また、深海でこれほど多くの生物が食べたり食べられたりを繰り返していなければ、大型の魚も存在できません」と、チョイ氏。

「マグロが何を食べているのかわからなければ、保護もできないでしょう」と、ハドック氏も言う。2人とも、この研究がこれからの保全活動に活かされることを願っている。(参考記事:「サメの寿命、通説より数十年長かったと判明」

モントレー湾水族館研究所による長い動画。(ナレーションは英語です)

文=Sarah Gibbens/訳=ルーバー荒井ハンナ