水陸両生の新タイプ恐竜を発表、まるでアヒル

暗い水中で獲物を感知し、小魚を捕まえていたか

2017.12.07
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鳥に似た水陸両生の恐竜ハルシュカラプトル・エスクイリエイの想像図。学名は、これに最も近い恐竜を発見したことで知られるポーランドの古生物学者ハルシュカ・オスモルスカ氏にちなんでつけられた。(COURTESY LUKAS PANZARIN)
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 こうした密売人に対して、一部の良心的な化石ディーラーは反撃に出ていた。その一人であるフランソワ・エスキュイリエ氏は、数カ月前にほかの密輸された化石をモンゴルに返還したばかりだったが、今度は鳥のような頭部とガチョウのような長い首を持つモンゴル産の化石が新たに市場に出ていることを知った。

 エスキュイリエ氏は化石を確保し、ベルギー王立自然史博物館の古生物学者を介してコー氏の知るところとなった。研究者が調べ終わったら、化石はモンゴルに返還されることになっている。ハルシュカラプトル・エスクイリエイの種名は、化石を救ったエスキュイリエ氏への敬意を表してつけられた。

 研究者たちは当初、この化石が捏造されたものではないかと疑った。そのようなことは実際に起こりうる。『ナショナル ジオグラフィック』誌は1999年に「アーケオラプトル」という鳥に似た恐竜の化石が発見されたとする記事を掲載したが、最終的に、この化石は2つの無関係な化石を接着して作った偽物だったことが判明している。

 コー氏のチームは慎重だった。彼らはこの化石をフランスの欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)に送り、X線で詳細に調べた(ESRFのX線スキャンは世界最高レベルで、霊長類の頭蓋骨の化石を調べたときには内耳の複雑な構造まで明らかにすることができた)。(参考記事:「シンクロトロンで撮影した白亜紀のハエ」

ワニや鳥との共通点

 6テラバイトにおよぶ膨大なデータを慎重に分析した研究者たちは、この化石が本物で、非常に変わっていることを確認した。

 第1に、恐竜の鼻先には、顔面で圧力を感知するための神経や血管が入っていたと思われる空洞があった。今日のワニや水鳥の顔面にも同様の器官があり、触覚を鋭敏にして、水中で動く獲物を見つけやすくしている。(参考記事:「恐竜の脳の化石を初めて発見、知能はワニ程度か」

「予想外の発見でした。標本を割っても、この構造には気づかなかったでしょう」と、論文共著者であるESRFのポール・タフォロー氏は言う。

 また、この恐竜の長く柔軟な首は、現在のサギのように獲物の不意をつくのに役立っただろう。いちばん外側の指が異常に長いが、これはヒレ足や水かきをもつ動物でよく見られる特徴であり、股関節は、力強く水を蹴って泳いでいたことを示している。

 現代のワニの触覚について研究している米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の生物学者ダンカン・リーチ氏は、「この恐竜には、水中の浅いところや深いところにいる獲物を感知し、捕獲するのに必要な機能がよく備わっていました」と言う。

 カナダ、ロイヤル・ティレル古生物学博物館の古生物学者ドン・ヘンダーソン氏もこの点に同意するが、ハルシュカラプトルには陸上生活に適した後肢を残す強い動機があったと付け加える。子どものためだ。これまでに得られている証拠から、恐竜は鳥類やワニのように水の外で卵を産む必要があったと考えられているのだ(2億4500万年前の遠縁の海生の爬虫類は、卵生ではなく胎生だった可能性がある)。

「後肢を放棄する恐竜はいなかったでしょう。後肢を失ったら繁殖できなくなってしまうからです」と彼は言う。

 今回のハルシュカラプトルの発見でカリー氏が最も嬉しく思ったのは、これだけ長く研究されているのに、恐竜の化石がまだ私たちを驚かせてくれたことだった。

「有名な発掘現場では、今でも新しい化石が発見されていて、誰も想像しなかったような、信じられないくらい多様な形態の生物がいたことを教えてくれます」とカリー氏は言う。「私たちは、地球上に生息していた動物の1%のそのまた1%しか知らないのかもしれません」(参考記事:「史上最大の翼竜、こんなに頭が大きかった」

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子

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