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ケニアに住むユーニス・ニョロヘ(右)は、2万円ほどの融資を受けて、ブタ1頭と飼料を購入した。 農家の経営状況などを記録する携帯電話用アプリ「ファームドライブ」のデータを銀行に示して、 自分に融資しても大丈夫だと納得させたのだ。ファームドライブの開発者の一人であるペリス・ボシレは、 ニョロヘはアプリの利点を最大限に活用していると話す。ニョロヘは融資資金を全額返済した。PHOTOGRAPH BY CIRIL JAZBEC

 アフリカでは今、若いIT起業家が続々と現れ、地域の変革に取り組んでいる。ケニア、ルワンダ、ナイジェリア、南アフリカには、ここ数年で欧米から数十億円の投資が流れ込んだ。ITを駆使する若い世代がその資金を得て、地域に密着した発想で起業し、人々の暮らしを改善しようと奮闘している。

 アフリカの人々の平均年齢はほかの大陸に比べて若く、市場の可能性は計り知れない。さらに、ほとんど活用されていない労働力は魅力的な存在だ。

「地球上で人口が急増している大陸はアフリカだけです。その勢いはますます加速するでしょう。アジア諸国を観察してわかったことがあります。発展途上の地域に、さまざまな事業を手がける人間が多くいれば、投資が格段に増える可能性があるということです。アフリカはまさに、そうした場所なのです」と、ルワンダ開発局のスティーブ・ムタバジは語る。

村から抜け出すための“切符”

 ケニアのケブセ村に、ペリス・ボシレという名の少女がいた。家はトウモロコシを栽培していて、彼女は母親の畑仕事を見ながら育った。村人は全員が農家で、あとは農業を継ぐ子どもたちを教える教師だけだ。現金収入はほとんどなく、誰もが自給自足の暮らしを続けていた。

 しかし、ボシレの運命に転機が訪れた。10歳の時だ。両親が入れてくれた寄宿学校に、誰かが寄付した中古のパソコンが7台あったのだ。初めて見たときは何の機械かわからなかったし、キーボードの打ち方も知らなかった。それでも抜群に頭が良かったボシレは、コンピューターが村から抜け出すための“切符”だとすぐに理解する。

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