雪男イエティの正体はクマ、進化史まで解明

「証拠」のDNAを詳しく分析、希少なクマの保護に貢献も

2017.12.01
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 2014年に発表されて以来、物議を醸しているこの論文によると、ブータンとインド北部のイエティの毛皮とされる2点の試料のDNAが、古代のホッキョクグマのDNAとよく一致していたという。 この論文を発表した研究チームは、雪に覆われた山頂のどこかにホッキョクグマとヒグマが交雑した動物がまだ生きているかもしれないと述べていた。論文の内容に疑問を持ったリンドクビスト氏は、自分で検証してみることにした。(参考記事:「「イエティの正体はクマ」の真偽は?」

「ヒマラヤにホッキョクグマがいるわけがないと思ったのです」と彼女は言う。比較的限られたDNAの一部分しか調べていない研究手法にも疑問があった。

 彼女のチームはアジアのクマとイエティのものとされる試料を計24点入手した。4年前に分析された毛皮の試料そのものは入手できなかったが、より厳密な結果が得られるように、長いDNA配列を氏は詳しく詳しく調べた。

1950年代にイエズス会士がネパールの山で発見した、イエティのものとされる毛。(PHOTOGRAPH BY ICON FILMS LTD)
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「この研究により、分析が行われたイエティの試料がヒマラヤやチベットに生息するクマのものであることがはっきりしました」と、オーストラリア、ジェームズクック大学の保存生物学者ビル・ローレンス氏は言う。

 イエティのものとされる試料の収集と分析から、「この地域のクマの試料を入手し、その進化の歴史を解明する研究へとうまくつなげることができた」とリンドクビスト氏。

 彼女のチームが作成した新しい系統樹では、チベットのヒグマがヨーロッパや北米のヒグマと密接に関連している。対して、希少なヒマラヤのヒグマは、氷河期の氷河によっておよそ65万年前にほかのクマから隔離された系統とされた。

 バーネット氏は、今回の研究はイエティ伝説とは関係なく重要であると言う。この地域のクマに関する遺伝学的な研究は、これまでほとんど行われていなかったからだ。彼はこの論文がヒマラヤのヒグマの理解を深め、保護に役立つことを期待している。

 しかし、新しい遺伝学的発見がどんなにしっかりしたものであっても、イエティ伝説が消えることはないだろうとバーネット氏は言う。

「平凡な事実で神話を打ち砕くことはできません。イエティの物語を語り継ぐ人々がいて、悪条件が重なった状況で目撃されたり、雪の上に解けかけの足跡を残したりするクマがいるかぎり、伝説は続くでしょう」

文=John Pickrell/訳=三枝小夜子

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