地球に飛来する反物質の起源に新説、議論白熱

大気中の過剰な陽電子、パルサー由来を否定、サイエンス誌

2017.11.21
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地球に届くほど速くなかった?

 陽電子は電子の反物質だ。地球上で暮らす私たちは、日常的に電子と接しているが、陽電子に出会うことはまずない。しかし宇宙では、死んだ恒星や瀕死の恒星のまわりの荒れ狂う環境が、電子と陽電子のペアを作り出すことがある。これらの粒子が放り出され、磁場によってあちこち跳ね返されているうちに、物質に衝突することもある。

 例えば、パルサーは基本的に粒子加速器のような働きをする。パルサーの中には1秒間に700回という高速で自転するものがあり、周囲の環境を激しくかき乱し、電子や陽電子などの粒子を互いに衝突させる。

 こうした陽電子が十分な速度とエネルギーを持っていれば、パルサーの周囲から飛び出して宇宙を旅することができ、ときには地球にたどり着く。これが、地球の大気中に過剰にある陽電子の代表的な説明だ。ただし、宇宙空間を旅せずに、陽電子は光子と衝突してガンマ線を生じることが多い。このガンマ線も科学者は簡単に検出できる。

 今回、メキシコの高高度水チェレンコフガンマ線天文台(HAWC)での観測により、パルサー起源説の問題点が明らかになった。ピコ・デ・オリサバ国立公園の2つの火山の間に建設されたHAWCは、水を満たした300個の大きなタンクからなる。宇宙から飛来した超高エネルギー粒子がタンクの水を通る間、かすかに発光し、その光が粒子の種類と発生源に関する情報を与えてくれる。(参考記事:「宇宙全域のガンマ線地図が明らかに」

 2015年以来、HAWCはこうした粒子のデータを収集し、その発生源を調べてきた。同時に、地球から近い2つのパルサー「ゲミンガ」と「PSR B0656+14(モノジェムと呼ばれることもある)」の方向から届く高エネルギーガンマ線の観測も行った。(参考記事:「暗黒物質の証拠、南極上空で発見?」

 研究チームは、ガンマ線の観測結果に基づいて、ゲミンガとモノジェムの周囲での粒子の運動速度を計算した。その結果、パルサーの陽電子は地球に飛来できるほど高速でないことがわかった、とロペス・コト氏は言う。

 この2つのパルサーの方向にある星間物質がとりわけ濃いせいで、粒子が高速で飛び出せないと考えられるという。

 それが本当なら困ったことになる。地球から十分に近く、十分に年をとっているゲミンガとモノジェムは、地球大気中の過剰な陽電子のかなりの部分を供給していると考えられていたからだ。研究チームは、この2つのパルサーが除外されるなら、「ほかのパルサー、マイクロクエーサーや超新星残骸などのパルサー以外の宇宙の加速器、暗黒物質の対消滅や崩壊」などの原因を考えなければならないと主張する。

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