真っ白なヘラジカに射殺許可、論争勃発

女性がヘラジカと接触してけが、駆除の決定に住民からさまざまな反応が

2017.11.16
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【動画】珍しい白いヘラジカ、スウェーデンで撮影される
2017年8月にハンズ・ニルソン氏が撮った動画により、このヘラジカは瞬く間にスポットライトを浴びた。(解説は英語です)

 スウェーデン、ベルムランド県を歩き回る大きな白いヘラジカ(ムース)。同国の地方議員ハンズ・ニルソン氏が撮影した映像だ。2017年8月、ナショナル ジオグラフィックがこのヘラジカについての記事を掲載したのをはじめ、ニルソン氏の映像は世界中のメディアで大きく取り上げられた。(参考記事:「【動画】真っ白なヘラジカ、増えている可能性も」

 ところが、このニュースが駆け巡った2カ月後、白いヘラジカが駆除の対象となった。警察が射殺許可を出すことにしたのだ。

ジョギング女性との接触事故

 11月上旬、話題のヘラジカと住民との接触事故が起こったのを受け、警察は「保護狩猟」という対策の実施を決めた。報道によると、若い女性が犬2匹を連れ、リードを自分の腰につないで、ヘラジカの縄張りと隣接する地域をジョギングしていた。犬がヘラジカを目にして吠え始めると、ヘラジカが女性に突進。女性は肩を脱臼するけがを負った。

 この女性が警察に被害を訴えると、論争が巻き起こった。

 ベルムランド県アルビカ市の警察官は、スウェーデンの放送局「SvenskJakt」に対し、住民、特に高齢者から不安を感じるとの訴えがあったため駆除を決めたと説明した。(参考記事:「群衆に火をつけられ、逃げるゾウの親子」

 アルビカ市の広報担当者、カタリナ・ベルナウ氏はEメールでナショナル ジオグラフィックの取材に応じ、「決定は警察部門が単独で下したもので、人への脅威と考えられる動物に対する標準的な対応です」と説明している。

 駆除のニュースに対し、市民からは抗議の声が上がった。珍しいヘラジカを殺さないでほしいという意見もあれば、警察の対応は過剰だという意見もあった。

「この決定が茶色のヘラジカに対してなされたなら、駆除はもっと迅速に行われていたでしょう」とニルソン氏も認めている。

 一般の意見は、概ね3つに分かれた。珍しい色のヘラジカなので保護すべきというもの、どんなヘラジカでも殺してはならないというもの、色を理由にこのヘラジカへの対応を変えるべきでないというものだ。

 スウェーデンのあるヘラジカ保護区からは、壁で囲った保護区域で白いヘラジカを生活させようという申し出さえあった。(参考記事:「【動画】極めて珍しい白いオランウータンを保護」


【参考動画】2頭のオスのヘラジカがアラスカ州の住宅地でガチンコ対決(この記事を見る→「ヘラジカ、住宅地で迫力のガチンコ対決」

1万4000人を超える署名

 しかし11月14日、警察は駆除の決定を撤回し、ヘラジカの助命を決めた。

 この判断には、ヘラジカを生かしてほしいというニルソン氏の嘆願も影響しているだろう。ニルソン氏はナショナル ジオグラフィックに対し、「この野生動物に対して責任を感じました」と電話で説明。白いヘラジカの命を救ってほしいというオンラインでの請願に、36時間以内に1万4千人分を超す署名が集まったという。

 駆除したいという狩猟者がいないという背景もあるだろう。「誰であれ、このヘラジカを射殺すれば『白ヘラジカを殺した奴』と呼ばれていたでしょうから」とニルソン氏は言う。

 今のところ白いヘラジカは安全だが、変わらず注目を浴び続けている。地元の放送局によれば、ヘラジカの居場所が今年の夏に報じられて以来、貴重な動物を自分の目で見ようとする人々がベルムランド県に大挙して押し寄せているとのことだ。

 ニルソン氏、住民、そして白いヘラジカのファンたちは、人間の干渉が増えることで、再び遭遇事故が起こるのは時間の問題だと懸念している。(参考記事:「動物を救うために殺してもいいのか?」

文=Sarah Gibbens/訳=高野夏美

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