太古の巨大カワウソ、水辺の支配者か、最新研究

50キロを超える体に、貝殻を噛み砕く強力な顎、中国南部の湿地帯

2017.11.14
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 ところが、実際に分かったのは、現生のカワウソ全てについて、顎の硬さは食性によらず、下顎が体に対して小さいほど硬いという単純な関係だった。

「私たちにとっては驚きでした」とツェン氏。

 さらにチームを驚かせたのは、この関係から計算されるより、サイモゲールの顎が6倍も硬かったことだ。カワウソは水中での狩りに非常によく適応しているため、この巨体の種もやはり貝や甲殻類を食べていたと考えられる。硬く大きな獲物も噛み砕ける力は、今生きている子孫よりもずっと高かったのかもしれない。

道具を使うと顎が柔らかく?

 サイモゲールほど桁外れではないが、現代のカワウソにも、ツェン氏らのチームが発見した関係に当てはまらない種がいる。

 たとえばツメナシカワウソの顎の頑丈さは、その大きさから算出される値をわずかだが上回っている。理由は明らかで、比較的殻の硬いカニを好んで食べるためだ。

 一方、ウニを日常的に食べるラッコの下顎は、体格の割に柔らかい。これは、石をハンマーのように使ってウニの丈夫な殻をラッコが壊すからかもしれない。知られている限り、ラッコは道具を使う数少ない海洋哺乳類の1つだ。

 今のところ憶測にすぎないが、道具の使用を発達させたことで、ラッコは噛む力を強化する必要性が薄れたのではないかとツェン氏らは考えている。

「確証はありません」とツェン氏は認めつつ、「示唆的ではあります」と話している。

 米チャールストン大学の古生物学者であるロバート・ボーセネッカー氏はこの見解について、「的を射ていると思います」と話す。同時に、ラッコの化石記録は今に至るまで非常に乏しいため、確かなことは言えないとも指摘した。なお、氏は今回の研究には関わっていない。

 とはいえ、これは突飛な考え方ではない。人類学者の間には、太古の昔に人類が道具を使い始めてから、頭骨の構造が変わり始めたという主張がある。消化の仕事の一部を手に任せたことで、私たちの頭骨の主な役目が食物を砕くことから、脳の保護に移行したというものだ。(参考記事:「ヒトはなぜ人間に進化した? 12の仮説とその変遷」

「何らかの形で」とツェン氏は言う。「食べ物と脳の進化は関連しているのです」(参考記事:「食べ物で顔はこんなに変わる」

文=Jason G. Goldman/訳=高野夏美

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