果物の王ドリアン、意外な動物が受粉を手助け

花を食べる厄介者と思われていたが、実は大事な役割

2017.10.13
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ドリアンはアジアで人気の果物。この植物の授粉を、意外な動物が担っていることがわかった。(PHOTOGRAPH BY GABBY SALAZAR, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 強烈なにおいを放つ「果物の王様」ドリアン(学名:Durio zibethinus)。このフルーツができるのに重要な役割を、オオコウモリが果たしていることが最新研究で明らかになった。

 オオコウモリと言えば、作物を荒らす厄介者と考えられてきた。ところが、カメラトラップ(自動撮影装置)を使った調査によって、実はオオコウモリがドリアンの花粉を媒介していることが判明、オンライン学術誌「エコロジー・アンド・エボリューション」に論文が発表された。(参考記事:「【動画】花粉を食べる珍しいゴキブリ、授粉も?」

 ドリアンは、マレーシアやタイなどの国々では経済的にも重要な作物となっている。「コウモリは一般に悪いイメージがありますが、それを払拭するにはコウモリの有益な面を扱った今回のような研究が大切なのです」と、論文の筆頭著者でマレーシアの環境保護NGO「リンバ」の代表であるシーマ・アブドル・アジズ氏は話す。

「人々にコウモリ保護の重要性を知ってもらうには、さらにその生態系サービス(人類に有益な生態系の機能)について研究する必要があります」

オオコウモリは授粉しないと思われていた

 今回、ドリアンの授粉を担うことがわかったのは、オオコウモリ科に属するヒメオオコウモリ(学名:Pteropus hypomelanus)。翼を開くと幅1メートルを超えるコウモリで、蜜を求めて花が咲いているドリアンの木にやってくる。これまでは花に被害を与える動物と考えられていたが、その具体的な証拠はほとんどなかった。(参考記事:「コウモリと食虫植物の奇妙な互恵関係」

 アジズ氏ら研究チームが向かったのは、マレー半島に近いティオマン島にあるドリアンの果樹園。赤外線カメラを仕掛ける場所は、高くもろい枝の上で、まわりには攻撃的な大型のミツバチもいる。カメラの設置には、木登りのプロたちも参加した。しかしアジズ氏は、それだけの価値がある結果が得られたと言う。

「ついに明らかな証拠が得られたのです。動画も撮影できました。オオコウモリはドリアンの花蜜を吸い、同時に授粉を行っていたのです」

ヒメオオコウモリはドリアンの花を害するのでなく、受粉を手伝っていた。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 小型のコウモリに授粉を行うものがいることは知られていたが、オオコウモリは授粉を行うには大きすぎるというのが通説だった。(参考記事:「コウモリを誘う花の“声”」

 動画からわかったのは、ヒメオオコウモリの採食行動は花を傷つけるものではなく、逆にドリアンが実をつけるためによい影響を与えていたことだ。

 メキシコ国立工科大学ドゥランゴ校の生態学者であるベロニカ・ザモラ=グティエレス氏は、「コウモリによる授粉や作物への貢献についてはほとんど知られていませんでした。そういう意味で、今回の研究は先駆的です」と話している。なお、同氏は本研究とは無関係だ。

 オオコウモリは、狩猟や生息地の喪失によって危機的な状況にある。世界的に見ても、ヒメオオコウモリの生息数は減少しており、マレーシアでは絶滅が危ぶまれている。

テキーラが飲めるのも

 コウモリは、世界の熱帯地方で商品作物の授粉を担っている。テキーラの原料になるリュウゼツランなど、米国南部やメキシコの作物も同様だ。テキーラを飲むときは、コウモリにも感謝しなければならない。

「ハチの数が激減しており、授粉は重大な危機を迎えています。ハチに大きな影響を与えたのは、おそらく人間が作りだした脅威です。その脅威によって、コウモリなどの他の花粉媒介者も影響を受けているかもしれません」。ザモラ=グティエレス氏はそう述べる。(参考記事:「花粉の運び屋たち」

「人間は、蜜を飲むコウモリから多大な恩恵を受けています。コウモリは私たちの食をも支えてくれているのです」(参考記事:「コウモリやナマケモノはなぜ逆さまでも平気なのか」

文=Mary Bates/訳=鈴木和博

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