ネアンデルタール人のゲノム解読、我々の病に影響

統合失調症や悪玉コレステロールとの関連も、クロアチアの化石の全ゲノムを解析

2017.10.10
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2008年に公開されたネアンデルタール人の女性の復元像。DNAの解析結果に基づいて制作された。(PHOTOGRAPH BY JOE MCNALLY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 秋だというのにひどい日焼けをしてしまったとか、関節の調子が悪いのなら、その原因の一端はもしかするとネアンデルタール人にあるかもしれない。(参考記事:「ネアンデルタール人 その絶滅の謎」

 5万2000年前のネアンデルタール人女性について、全ゲノムの高精度な塩基配列を決定したことを、ドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所の研究者らが科学誌「サイエンス」に発表した。今回、解析されたのはヨーロッパ南部、クロアチアのヴィンディア洞窟で発見されたネアンデルタール人化石。全ゲノムの配列決定はネアンデルタール人では2例目となる。

 このゲノムや他のネアンデルタール人女性のゲノム、そして大勢の現代人のゲノムの分析から、ネアンデルタール人のDNAがホモ・サピエンスの遺伝的成り立ちにどのように関係しているか、さらには私たち現代人の健康にどのような影響を及ぼしているかについて、新たなヒントがもたらされている。(参考記事:「現生人類に残るネアンデルタールDNA」

遺伝子の1.8~2.6%がネアンデルタール人由来

 今回の論文によると、ユーラシア系の祖先を持つ人々の全遺伝子の1.8~2.6%がネアンデルタール人の遺伝子に由来しているという。前回の見積もりでは1.5~2.1%だったので、割合がわずかに高くなっている。

 さらに、今回調べられたネアンデルタール人ゲノムのいくつかの領域が、一部の現代人のゲノム中にある、血中コレステロール濃度、統合失調症、摂食障害、関節リウマチなどのさまざまな健康問題と密接に関連している部分と一致していることも明らかになった。(参考記事:「ネアンデルタール人はゆっくり成長した、研究成果」

 研究チームを率いたカイ・プリューファー氏は、すべての病気をネアンデルタール人のせいにしてはならないと釘をさす。遺伝子の発現には、数千まではいかないが数百の因子が影響を及ぼしているからだ。「あくまでも関連があるかないかという話です。特定の遺伝子バリアント(多様体)を持っているから病気になるとかならないとか、そういう話ではありません」と彼は言う。

 私たちがネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子の中には、役に立っているものもあるようだ。「例えば、LDLコレステロール濃度に関連する遺伝子です。ヴィンディア洞窟のネアンデルタール人女性が持っていた遺伝子バリアントは、体を保護する役割を果たすものでした」とプリューファー氏。「悪玉コレステロール」の別名を持つLDLコレステロールは動脈硬化と関連しているため、この遺伝子バリアントはそうした疾患を防ぐのに役立つ可能性がある。

「一般に、ネアンデルタール人から受け継いだものは好ましくないとされていますが、そうとは限りません」(参考記事:「人類はネアンデルタール人から高度な石器文化を受け継いだ?」

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