カモのペニス、ライバルがいると長くなると判明

発達が遅れる種も、社会環境が生殖器の成長に影響する珍しい例

2017.09.22
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 アカオタテガモはつがいを形成しない。そしてほぼ例外なく、オスが強制的に交尾を行う。一方、コスズガモはつがいをつくる習性があり、オスがほかのメスに交尾を強要することは比較的少ない。

 ブレナン氏らの予想通り、群れでライバルのいる鳥小屋に入れられたコスズガモのオスは、ペアにされたオスに比べてペニスを長く発達させた。

アカオタテガモのペニスはらせん状だ。「彼らはかなり協力的です。もう慣れていますから」と、生物学者のパトリシア・ブレナン氏。(PHOTOGRABY BY PATRICIA BRENNAN)
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 一方、アカオタテガモのペニスはそもそも体の長さに匹敵するほど大きい。ブレナン氏はペニスがそれ以上長くなるとは想像できなかった。ある意味、ブレナン氏の予想は的中した。群れのオスのペニスがほかより長くはならなかった。だがしかし、予想外のことも起きた。驚くべきことに、ある時期までほとんどペニスが発達しなかったものがいたのだ。(参考記事:「女性の好みが男性器の進化に影響?」

強いオスから隠れてこっそりと

 そのわけはこうだ。アカオタテガモの群れには順位制が見られた。そして、上位のオス2羽だけが早くからペニスをゆっくりと発達させ、繁殖期の終わりまで維持し続ける。かたや、上位のオスに太刀打ちできない下位のオスたちは別の戦略をとった。「残りのオスたちは急速にペニスを発達させ、(上位の)オスにひどい目に遭わされる前にこっそり交尾しようとしました」とブレナン氏は話す。下位のオスたちは交尾を終えると、同じく急速にペニスを繁殖不能な状態に戻す。幸運に恵まれれば、ボスの怒りに触れることなく逃げ切れるというわけだ。(参考記事:「小さなオスのスニーカー戦略とは」

 このように共同生活をさせたことで、2種のカモについて、社会環境がペニスの発達に著しく影響を及ぼすことが明らかになった。社会環境に応じて生殖器を変化させる動物は、ほかには雌雄同体の甲殻類であるフジツボが知られている。フジツボは群れの密度が低い場合、少し離れた個体に届きやすいよう、ペニスを長く発達させる。

 カモがこのようなことができるのは、生殖器を毎年再発達させるという特殊な能力を持つからだと、米国南カリフォルニア大学の生物学者マット・ディーン氏は言う。精巣を年ごとに発達させ、元に戻す脊椎動物は存在するが、ペニスの場合は極めて珍しい。なお、氏はこの研究に関わってはいない。(参考記事:「【動画】優雅で不思議なクリオネの交尾」

「年ごとに状況が異なる場合、そのような柔軟性は有益です」とディーン氏。「ペニスが必要ないときは、おそらく発達させないのでしょう」。あるいは、少なくともそれほど長く発達させないのだろう。(参考記事:「ハイエナの雌に「ペニス」、雌雄どう判別?」

文=Jason G. Goldman/訳=米井香織

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