胸に迫る美しさ、カッシーニの最後の写真集

タイタンがきらめき、エンケラドスが笑い、光の環がせまる

2017.09.21
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NASAの探査機カッシーニが最後に撮影した、土星の向こうへ沈みゆく氷の衛星エンケラドス。カッシーニは2017年9月15日、自ら土星に突入して消滅した。(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL- CALTECH, SPACE SCIENCE INSTITUTE)
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 2017年9月15日、亜麻色をした土星の雲との最後のランデブーを前に、NASAの探査機カッシーニは、土星のはずれから地球に向けて最後の絵葉書を投函した。(参考記事:「さよならカッシーニ、ついに土星衝突軌道に突入」

 それはまるで遠くへ去りゆく友に贈る、写真コラージュのようだ。未加工のざらついた画像の中では、もやのかかる衛星タイタンがきらめき、氷の衛星エンケラドスの三日月がにやりと笑い、巨大な土星がまぶしく輝き、この惑星を象徴する明るい環が視界を埋め尽くしている。

 ミッションマネージャーらはまた、発信から数時間で地球に到達した新たな画像の中に、土星のA環から飛び出して衛星になるかもしれない天体ペギーの姿を確認できることを期待している。

「我々は2012年からペギーの観察を続け、これが土星の環から飛び出して独立した衛星となるかどうかに注目してきました」。カッシーニ・プロジェクトの科学者リンダ・スピルカー氏はそう語る。「ペギーが今どうなっているのかを確認できるのも、これが最後の機会になります」

カッシーニがいちばん最後に撮影した写真には、土星の夜側が写り込んでいる。カッシーニはこの場所で土星の大気に突入し、その運命を終えた。土星の渦巻く雲が、環が反射する光を浴びて輝いている。(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL- CALTECH, SPACE SCIENCE INSTITUTE)
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 プロジェクトチームがなぜミッション最後のターゲットにペギーを選んだのか、その理由は明らかだ。カッシーニが過去13年間、50万枚近い写真を撮影しながら探査を続けてきた土星系の中でも、ペギーは特に興味深く、謎に満ちた存在だからだ。

生命が存在するかもしれない衛星のために

 カッシーニが近くから観察したおかげで、詳しい様子が明らかになった衛星のひとつがタイタンだ。今ではタイタンは、太陽系内で最も生命の存在が期待される星のひとつとなっている。(参考記事:「土星の衛星タイタンに「ビニル製」生命の可能性」

 水星よりも大きい衛星タイタンは、オレンジ色の分厚いもやのベールに包まれている。そのもやの下の表面は油の海や湖に覆われているが、そうした事実も、カッシーニがベールの下を見せてくれるまでは仮説に過ぎなかった。そして、驚くべきことにタイタンの表面は恐ろしいほど地球によく似ていた。(参考記事:「まるで地球、衛星タイタンの驚くべき写真」

「カッシーニの最後の写真は、人々の記憶に永遠に焼き付けられ、次の探査機が無事タイタンへとたどり着く日まで、われわれに長い会議や眠れない夜を乗り越える力を与えてくれるでしょう」。米ジョンズ・ホプキンス大学のサラ・ホルスト氏はそう語る。

 タイタンよりも小さな衛星エンケラドスの場合も同様だ。2005年に初めてエンケラドスのそばを通過したとき、カッシーニはこの衛星の南極で、凍った塩水を噴き出している間欠泉を確認した。こうした活動があることはかなり以前から予測されていたが、実際に目にしたその光景は、予想をはるかに上回る壮大なものだった。(参考記事:「土星探査機カッシーニ、エンケラドスの間欠泉に突入」

 カッシーニはまた、エンケラドスを包む氷の外殻の下には全球を覆う海があり、そこには生命が生まれるために必要な材料がすべて揃っていることも教えてくれた。

「「エンケラドスの入り」の動画。すべての動画フレームでエンケラドスの位置が揃うよう調整しています」というツイート。

 このタイタンとエンケラドスというふたつの衛星こそが、カッシーニを土星系の中で自由に遊ばせておくことが許されなかった理由だ。カッシーニの燃料は残り少なく、研究者らは、生命が存在するかもしれない星を汚染する恐れをよしとしなかった。(参考記事:「火星探査車の着陸地点を選ぶということ」

「制御の効かない探査機は、土星からはるか遠くまで移動するか、その中に墜ちるしかないのです」と、カッシーニのプログラムマネージャー、アール・メイズ氏は言う。

 そこでカッシーニは地球の科学者たちに別れを告げ、痛ましくも土星に突入することになったのだ。

 最後に撮影された数枚の写真のうちの1枚には、カッシーニが土星の大気へと突入する瞬間の様子が写っている。カッシーニはこのとき、さらに大気の深みへと沈みながら地球の方を向いてデータを送り、やがて一筋の光となって静かに息を引きとった。

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