マダガスカル島のワオキツネザルは、ジャングルの中で複数の鳴き声を使い分けてコミュニケーションをする。(PHOTOGRAPH BY FRANS LANTING, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 ワオキツネザル(Lemur catta)では、理解ある仲間との関係を維持するために、弱いオスほど口が達者になるようだ。

 科学誌「Ethology(動物行動学)」誌の9月号に発表された論文によると、オスのなかで特に劣位の個体では、2種類の鳴き声が重要になる。うめくような長い鳴き声と、鼻を鳴らすような短い声だ。長い鳴き声は群れのそばにいることを確認するためのものであり、短い鳴き声は、自分の存在を許容してくれるほかの少数のサルへの親しみを伝えるものだという。(参考記事:「【動画】「笑い声」で明るい感情が伝染、NZの希少オウム」

 これまでの研究で、アフリカのマダガスカル島周辺に生息するワオキツネザルが20種強の鳴き声を使い分けていることが知られていた。しかし、野生のワオキツネザルの短い鳴き声の解読を試みた研究は今回が初めてだ。

ワオキツネザルのフン、フンという短い鳴き声。

ワオキツネザルのうめくような長い鳴き声

「彼らは群れ全体とのつながりを保つために長い鳴き声を使い、群れの中の仲良しのサルとの関係を保つために短い鳴き声を使っているのです」

 そう語るのは、カナダ、トロント大学の霊長類学者で、論文の筆頭著者であるローラ・ボルト氏だ。氏によれば、ワオキツネザルの社交的な行動が、多くの研究者が思っているよりはるかにニュアンスに富んでいることが分かったという。(参考記事:「【動画】リカオンがくしゃみで投票、合意形成か」

トップにならない限り危険がいっぱい

 ワオキツネザルは5~27匹の母系集団を作って暮らしている。その鳴き声にはさまざまなものがあり、猛禽のマダガスカルチュウヒダカなどによる空からの襲撃と、フォッサというネコのような動物の地上からの脅威に対しては、異なる警戒音を使い分ける。(参考記事:「色で「しゃべる」カメレオン」

 群れの中のメスは、日にちをずらして発情期に入る。1回の発情期は24時間未満で、群れの中の複数のオスと交尾する。(参考記事:「“歌う”ペニス、鳴き声の大きな生物」

 この時期を除くと、ワオキツネザルのオスには危険がいっぱいだ。若いオスの多くは両親の群れから出ていくが、通常、ほかの群れからはあまり歓迎されない。オスのトップにならないかぎり、群れの中で最も低い地位になり、だからといって放置されるわけではない。

「劣位のオスは、群れのメスたちに叩かれたり噛まれたりします」とボルト氏。

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