弱いオスほどよくしゃべる、ワオキツネザルで判明

フンフンと鼻を鳴らすような声で仲間にアピール、最新研究

2017.09.15
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ワオキツネザルの群れはメスが支配する母系集団だ。(PHOTOGRAPH BY RAUL TOUZON, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 メスたちに攻撃されたり、ライバルのオスに負けたりしたオスは、群れの中に入らずに周りで暮らすようになる。離れていれば、虐待されにくくなるからだ。「それでも群れが移動するときには、彼らも後をついていきます」とボルト氏。

 群れの後をついていくオスは、捕食者に襲われる可能性が非常に高い。(参考記事:「【動画】ワニに襲われるヌーをカバが「救助」」

メスに叩かれるか、捕食者に襲われるかの綱渡り

 2010年、ボルト氏はマダガスカルの森にすむワオキツネザルの群れを5カ月にわたって追跡した。彼女は複数の群れを交互に観察し、同じ場所にとどまっている群れや森の中を移動する群れの中の特定のオスの行動を30分ごとに記録した。

劣位のオスは、群れの仲良しの個体に向けて頻繁に短い鳴き声を発していることが分かった。 (PHOTOGRAPH BY CYRIL RUOSO, MINDEN PICTURES, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 ボルト氏は、オスたちがどのような状況でどのような鳴き声を発するか(例えば、グルーミング仲間や自分の存在を許容してくれるメスの近くでは、その鳴き方が多くなるかどうか)を記録した。その結果、どのオスも2種類の鳴き声を発していたが、劣位のオスは鼻を鳴らすような短い声を発することが多かった。

 群れの周りで暮らす劣位のオスは、不寛容なメスに叩かれるか、捕食者に襲われるかという綱渡りの日々を送っている。彼らは、群れの中の寛容なサルに鼻声で呼びかけることで、少しでも安全に暮らそうとしているのかもしれない。

 キツネザルを研究する米ミシガン大学博士課程学生のラチナ・レディ氏は、ボルト氏の研究はワオキツネザルの社会関係の重要性を示すもので、非常に興味深いと言う。(参考記事:「【動画】ペンギンは沖でも声で集合か、初の報告」

「彼らは鳴き声を発するたびに、本当に何かを決断しているのです」とレディ氏。

 今回の研究は、ヒトの遠い親戚が、どのように相互作用し、固く結びついた群れを維持してきたかを解明する手がかりにもなる。(参考記事:「人類は暴力とともに進化、ただし現代は例外的」

 ボルト氏は言う。キツネザルの言語を学ぶことで、「初期人類の進化において、どんな要素が重要だったのかについてのヒントも得られるかもしれません」

文=Joshua Rapp Learn/訳=三枝小夜子

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