大きなスクリーンにミサイル発射の映像が映し出され、アクロバットの演者がまるでミサイルのように宙を飛ぶ。平壌で開かれたサーカスにて。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 国民を縛る厳格な法律や無慈悲な指導者で知られ、孤立した「隠者王国」と呼ばれてきた北朝鮮だが、その一方で外国からの旅行者を長い間受け入れてきた。中国の旅行会社は長年にわたり、外国人を北朝鮮に案内し、同国の人々の生活を垣間見るツアーに参加させてきた。そのうち、米国人は年間およそ1000人だ。米国人は北朝鮮の遊園地、学校、地下鉄の駅などを見学し、大半が無事に帰国している。(参考記事:「秘密主義の国、北朝鮮の基本情報」

 しかしこうした状況は、6月19日に、ホテルからポスターを盗んだとして平壌で拘束された米国人大学生オットー・ワームビア氏が亡くなったことで一変した。ワームビア氏に対する非人道的な扱いに加えて、核兵器保有を望む北朝鮮政権とワシントンとの関係が悪化していることから、米政府は北朝鮮への渡航を禁止した(北朝鮮はこの措置を「卑劣な手段」と表現している)。(参考記事:「【動画】見たことのないリアル平壌」

主体思想塔のてっぺんで自撮りをする、旅行者のジェーコブ・オーガスティン氏。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 渡航禁止措置が発効する9月1日を目前に控え、フォトジャーナリストのデビッド・グッテンフェルダー氏は、世界一頑なな秘密主義の国をぜひとも見学したいと望む6人の米国人旅行者とともに現地に向かった。グッテンフェルダー氏はおよそ20年間にわたり、北朝鮮で活動してきた数少ない西洋人ジャーナリストのひとりだ。彼はナショジオの取材も含めて、これまで50回近く北朝鮮に渡り、同国の政治・軍事状況をカメラに収めてきた。(参考記事:「北朝鮮 見え隠れする素顔」

 最後の旅行者たちは皆、強い好奇心にかられてツアーに参加したと口を揃えた。米国カリフォルニアで配車サービスのドライバーをしているブラッド・ユーン氏は、海外に来たのはこれが初めてということだった。両親には、心配をかけないよう中国へ行くと伝えてきたそうだ。韓国系米国人のエイミー・カン氏は、祖先の国や文化について知りたいと考え、夫とともに参加していた。(参考記事:「まるで核シェルター、北朝鮮の地下鉄に乗ってみた」

平壌―開城間の休憩所で軽食を売る北朝鮮の女性。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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「想像していたのとは、まるで違いました」とカン氏は言う。抑圧的な政権や、自由の欠如に関する恐ろしげな話ばかりを聞いていた彼女を驚かせたのは、平壌で目にしたごく普通の光景だった。そこでは人々が仕事をし、家族を持ち、お気に入りの米国映画の話をしていた。(参考記事:「北朝鮮、知られざる日常の娯楽 写真12点」

 旅行者である限り、北朝鮮では予定通りの展開と平穏が約束された範囲からはみ出すことはありえない。そこには突然の事件も、驚きもない。

平壌にあるレストラン。大画面のテレビの中では、北朝鮮軍の合唱団が歌を披露している。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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