イヌやネコはなぜ死んだ飼い主を食べるのか

80件を超える事例から傾向と対策を探る

2017.06.28
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人間を食べるのは「悪いイヌ」か

 イヌと深い絆で結ばれ、イヌを大切に扱っていたなら、たとえ自分が死んだとしても彼らに食べられることはないだろう。そう思いたい人もいるかもしれない。(参考記事:「犬は飼い主の言葉を理解している、脳研究で判明」

 しかしイヌの行動は、それほど単純なものではない。今回調べたケースにおいては、飼い主が過去にイヌを虐待していたことを示す証拠は一切見つかっていない。それどころか、いくつかのケースでは、友人や近隣の人たちが、飼い主はイヌと非常に良好な関係にあったと証言している。(参考記事:「カリスマ ドッグトレーナー、シーザー・ミランに聞いてみた」

 ここで注目すべきはペットの心理状態だ。「ああした行動の説明としてひとつ考えられるのは、ペットが意識を失った飼い主を助けようとしている、というものだ」とロスチャイルド氏は書いている。「動物は最初、顔を舐めたり、そっと押してみたりするが、それでも事態が変わらない場合、彼らは逆上してパニックになり、それが噛むという行動に繋がっている可能性がある」

「噛む」が「食べる」へと変化するのは、そう難しいことではないとランドー氏は言う。「必ずしもイヌが食べたがっているわけではなくても、血の味に刺激されて、食べるという行為が促されるわけです」(参考記事:「絶滅と考えられていた犬、半世紀ぶり見つかる」

犬種による違いは?

 イヌは種類によって気質が異なり、それが飼い主の死に対する反応に影響をおよぼす可能性があるとランドー氏は言う。とはいえ、飼い主を食べたケースを扱った法医学論文にはさまざまな犬種が登場し、その中にはいかにも愛らしいラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーも含まれている。(参考記事:「犬の遺伝子を科学する」

 今回参照したケースの中にも、雑種もいれば、狩猟犬や職業犬もいる。全体として見ると、イヌの大きさは概ね中型から大型で、もっとも小さい犬種はビーグルだった。ただし、体が大きく力が強いイヌほど死骸に大きな損傷を与えやすくなるため、そうしたケースの方が人の注意を引きやすい傾向にあるというのも否定できない。(参考記事:「戦場で兵士を守る犬たち」

 たとえば、頭が切り離されるほど飼い主の死骸が食べられた例が別々に3件あり、そのすべてがジャーマン・シェパードによるものだった。しかしおそらくは、ポメラニアンやチワワであっても、もしもっと力があれば人間の首を落とすのではないだろうか。

 ランドー氏は、重要なのはあるいは、犬種よりも個々のイヌの気質ではないかと考えている。飼い主と離れることに対して常に不安を感じているような、自信のない臆病なイヌが、パニックに陥って飼い主を舐め、それが齧ったり食べたりといった行動にエスカレートしやすいと考えられるためだ。

飼い主にできる対策は?

 あなたが死んだときに、ペットが絶対にあなたを食べないようにするには、ペットを飼わない以外に方法がない。ハムスターや鳥でさえ、人間を食べた記録がある。(参考記事:「風変わりなペットたち」

 飼い主が講じられる最善の対策は、あなたの姿がしばらく見えなかったときに、様子を見に来てくれる人を確保しておくことだとランドー氏は言う。そして、もしあなたの近所に高齢者や病気の人がいるなら、定期的に顔を見にいくようにすべきだろう。

「こうした対策を心がけることは、周りの人々と関わるためのちょうどよいきっかけになるでしょう。歳を重ねた人が社会の活動に参加するのは、誰にとっても益があることです」

どの子が好き?愛らしいイヌたちの写真9点
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