【動画】川で迷子のシロイルカ、飛行機で海へ

カナダでは絶滅危惧種の指定、個体数が増えない理由も不明

2017.06.20
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【動画】人の手を借りて海に帰ることができたシロイルカ。(解説は英語です)

 迷子になったと思われる若いオスのシロイルカ(ベルーガ)が飛行機で運ばれ、無事に海に返された。

 イルカが発見された場所は、カナダ、ニューブランズウィック州を流れるネピシグイット川。餌を探しているうちに上流に迷い込んだか、もしくは通常より高い潮に押し流されてしまったと思われる。2017年6月2日に撮影された動画には、澄んだ真水の中を泳ぐシロイルカが映っているが、地元の人の話によると、5月末からそこにいたようだ。

「今回のように環境に恵まれ、人間の助けを借りることができなかったら、十中八九シロイルカは生きながらえなかったでしょう」と、イルカの移送に携わったティム・バインダー氏は言う。彼は米シカゴにあるシェッド水族館の動物部門副責任者だ。(参考記事:「しゃべるシロイルカ、ナックに会う」

 シロイルカの体色はまっ白だが、川で救助された時点では、その輝くように明るい色が茶色味を帯びていた。

 カナダのバンクーバー水族館の獣医マーティン・ハウレナ氏は、この若いシロイルカが衰弱し、弱々しい動きをしているのに気がついた。

「体内の塩分濃度を調節できなくなっていました」と、ハウレナ氏は説明する。また、真水である川の水を摂取していたようだが、これはシロイルカにとって「命に関わる」行為だと付け加えた。

救出計画が始動

 救助に先立つ数週間前から、このシロイルカの様子はドローンを使用して撮影されていた。さまざまなグループの獣医がそれを観察しながら、イルカが自力で川を下り、セントローレンス湾に出るのを願った。(参考記事:「クジラに乗ったイルカの写真が話題、ほかの動物おんぶ写真も」

 イルカがいっこうに動き出さないのを見てとった救助者たちは、バスと同じくらいの大きさをしたこのシロイルカを、ネピシグイット川から移動させる計画を練り始める。

 シェッド水族館とバンクーバー水族館は、カナダ水産海洋省と野生動物救助のための非営利団体、そして地元の消防と警察の協力のもと、救出計画を指揮した。(参考記事:「座礁クジラ、救出の難しさ」

「この方策には極めて複雑な課題がありますから、時間をかけて周到に計画します。動物愛護と人間の安全を常に優先し、準備がすべて整ったと断言できるまで実行に移しません」と、座礁や負傷をした海洋動物を救助する団体「the Marine Animal Response Society」は6月12日にフェイスブックに書いている。

 15日の早朝に、シロイルカは網へ誘導された。カナダ放送協会のレポーター、ブレット・ラスキン氏のツイッターによると、救助チームは袋網、担架とエアーマットを使用してイルカを台に乗せた。そこからトラックで飛行場へ移動、12人乗りの飛行機に乗せて海へ行き、別の台に移し替えてから放し、無事仲間のもとに戻した。

 飛行機を使用した理由は、移動に要する時間を短縮するため。バインダー氏の推定では、救出作戦の所要時間は、捕獲から放すまでで計6時間足らずだ。

 バインダー氏によると、シロイルカは、セントローレンス湾に放されるとすぐに、他の動物と共に泳ぎ始めたらしい。じきに仲間の群れと合流できるだろうと彼は述べている。今後の行動を追跡するために、体には衛星発信器(サテライトタグ)が取り付けてある。(参考記事:「渡辺佑基 バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る」

カナダでは絶滅の危機

 シロイルカは、冬にはセントローレンス湾の中で見つかる傾向がある。春になると、セントローレンス河口に移動し、そこで夏の間を過ごす。

 国際自然保護連合(IUCN)は、絶滅の恐れのある種をまとめたレッドリストにおいて、シロイルカを「近危急種(Near Threatened)」に指定している。レッドリストの中では危険度の低いほうだが、カナダの絶滅危惧種法は、セントローレンス河口のシロイルカを「絶滅危惧種(Endangered)」に分類している。ここでは20世紀初頭に乱獲された結果、シロイルカの個体数が危険なほど減少し、回復の兆しを見せないまま今に至る。

 カナダでは、シロイルカを殺したり、傷つけたり、苦しめたりする行為は禁じられている。(参考記事:「和歌山・太地でイルカ漁始まる、世界が注視」

「どうしてシロイルカの数が増えないのか、理由はわかりません」と、バインダー氏は言う。「生息数は減少しています」

 同じくハウレナ氏も、セントローレンスのシロイルカ数が伸びない理由はまだはっきりしていないと認める。

「水質が汚染され、ガンなどの病気の発病率が高いことはすでに確認されています。2016年には9頭の幼いシロイルカが打ち上げられました」とハウレナ氏。「これもまた、はっきりと解明できずにいることの一つです」(参考記事:「イルカ・クジラの「潜水病」、集団座礁の一因か」

文=Sarah Gibbens/訳=潮裕子

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