ウナギ闇取引を摘発、親玉は「ウナギ漁の父」

特別レポート:米国ウナギビジネスの闇(1)

2017.06.20
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謎多き魚、世界で危機

 アメリカウナギ(Anguilla rostrata)は、20種近くいるとされるウナギ科の1種だ。自然界に見られる生物の中でも、その生態の謎の多さは屈指と言える。毎年、性成熟したウナギは川を後にし、産卵のため大西洋のバミューダ諸島に近いサルガッソ海へと長い距離を泳いでいく。(参考記事:「ヤバいウナギ―発見されたばかりの無垢な熱帯の新種にも伸びる「魔の手」」

「大西洋の水を全部抜いてビーチボールを蹴ったら、ボールはサルガッソに転がって行くでしょう。深い穴ですから」とシェルドン氏は言う。「深海へ深海へと向かわせる何かがウナギの中にあって、全員が産卵場所にたどり着くまで泳ぎ続けるんです」。産卵を終えた成魚は死ぬ。ウナギが産卵するところは、これまで誰も見たことがない。

 ヤナギの葉を透明なゼリー質にしたようなウナギの仔魚は、メキシコ湾流に乗って、ベネズエラからグリーンランドにかけての海岸線へ流されていく。そこで仔魚は稚魚シラスウナギとなり、河口から川を遡上していく。川底の草陰に隠れて成長し、20年ほどで大きいものは体長1.5メートルに達する。そして、サルガッソ海へ戻っていく。(参考記事:「ウナギ大海原の旅、衛星タグで初めて追跡」

メーン州のシラスウナギ漁期は10週間。その間、バイヤーは毎日昼夜を問わずシラスウナギを買ってくれる。(PHOTOGRAPH BY SARAH RICE, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 かつてアジアでは、アメリカウナギはニホンウナギやヨーロッパウナギに比べて味が落ちるとされ、国外向け売上の合計でもごく一部を占めるに過ぎなかった。だが2009年以降、「近絶滅種」(critically endangered)に指定されたヨーロッパウナギの輸出を欧州連合(EU)が規制すると、突如としてウナギ不足が起こった。特に日本での影響は大きかった。日本では毎年夏の盛りの「土用の丑の日」にウナギを食べる習慣があり、ウナギの年間消費量は5万トンを超える。(参考記事:「ウナギが食べられなくなる日 乱獲で資源は危機的に、生息地破壊も一因」

 ニホンウナギも急速に数が減っていたことから、養殖するウナギの稚魚を確保するため、アジアは米国に目を向けた。2012年までに、アメリカウナギの価格は1ポンド2000ドル超へと急騰し、メーン州の漁師の間でゴールドラッシュならぬ「ウナギラッシュ」が起こった。それまで、シーズンオフは建設業や民家のペンキ塗り、海藻の収穫などでどうにか生計をつないでいた者たちが、6月の第1週に終わるシラスウナギ漁の時期に、数十万ドルを荒稼ぎするようになった。

 今では、米国で捕れた天然シラスウナギが中国で養殖され、世界中のレストランでメニューに並んでいる。

特別レポート:米国ウナギビジネスの闇 第2回 ウナギ版ゴールドラッシュに狂奔する漁師たちにつづく

文=Rene Ebersole/訳=高野夏美

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