【動画】女性の手を引くオランウータン、理由は

ツアー客が遭遇した珍事、親愛の印か? 助けを求めているのか?

2017.06.15
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【動画】女性の手を引いて離さないオランウータン。(解説は英語です)

 オランウータンを近くで見られるかもしれない――インドネシア、ブキットラワンのジャングルを歩くツアーに参加した若いカップルはそう期待していた。だが、彼らを待っていたのは「近くで見る」以上の事態だった。

 その出来事は、樹木が生い茂るジャングルを歩く一団の目の前で起こった。1匹のオランウータンがカップルの女性の手首を両手でつかみ、強く引いて地面に座らせてしまったのだ。背中には、そのオランウータンの子どもと思われる若い個体がしがみついていた。(参考記事:「オランウータンの親子」

 どうしたらいいか戸惑った女性は、地面にしゃがみこんだまま、オランウータンの指をそっと引き剥がそうとした。最終的には、オランウータンは食べ物につられて女性の手を離し、子どもと一緒に歩き去った。

 このカップルがツアーガイドから聞いたところでは、オランウータンはおそらく女性をガイドと勘違いして、フルーツを持っているはずだと考えたのだろうということだった。

人間に親しみを感じている?

 この動画を見ていると、遺伝的に人間と非常に近しい関係にあるオランウータンは、我々に対して親しみを感じているのではないかと思えてくる。(参考記事:「【動画】極めて珍しい白いオランウータンを保護」

 しかし、ナショナル ジオグラフィック協会の助成を受けている研究者で、オランウータンの行動に詳しいシェリル・ノット氏は、それは間違いだと語る。動画の中のオランウータンの行動や、その場所がオランウータンのリハビリ施設の近くだったことを考えると、このオランウータンは過去に人間に保護され、リハビリを経て森へ戻された個体ではないかとノット氏は推測する。

「このオランウータンのことをよく知らない状態での解釈は難しいですが、リハビリを受けたことのある個体は人間に強い結びつきを感じるものです。あの個体は女性の手を握ることで、何らかの社会的な接触を求めていたのでしょう」

 オランウータンが地面に降りているところから見て、管理施設が餌を制限している可能性もあるとノット氏は付け加える。野生のオランウータンは通常、樹上を移動するからだ。(参考記事:「オランウータン驚異の木登り、こうして撮った」

「リハビリを受けたオランウータンは、(野生に返されるときには)どっちつかずの不安定な状態になります」とノット氏。彼らは施設にいる間に、人間と強い結びつきを感じるようになることが多い。幼い頃から人間に育てられる場合はなおさらだ。(参考記事:「研究室に行ってみた。国立科学博物館 オランウータン 久世濃子」

 ノット氏のチームは、野生のオランウータンが近くにいる場所では足音を忍ばせて歩くようにしているという。人間がそばにいると、彼らは安心できないからだ。野生のオランウータンは、他の動物が不快なほどに近づいてくると警戒の声を発する。研究者らはまた、野生のオランウータンと、アイコンタクトなどのちょっとしたコミュニケーションをとることも避けている。

 ツアーグループが野生のオランウータンに接近することについては、反対する意見もある。スマトラオランウータンは国際自然保護連合(IUCN)によって近絶滅種(critically endangered)に指定されている。(参考記事:「スマトラ島、オランウータンの窮状」

 生息地の破壊は、彼らにとって大きな脅威となる。大規模なヤシ油製造が原因で、すでに広大な生息地が失われてきた。ペットとして違法にオランウータンを入手しようとする人々もまた、彼らが直面する脅威の一つだ。

【参考記事】ナショナル ジオグラフィック 2016年12月号特集「オランウータン 樹上の危うい未来」

文=Sarah Gibbens/訳=北村京子

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