夢に出てきそう? 不気味な深海のモンスター

鋭い歯と大きな目をもった雌雄同体の深海魚

2017.06.12
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【動画】夢に出てきそうな不気味な姿をしたミナミシンカイエソ。(解説は英語です)

 オーストラリアの海洋調査船インベスティゲーター号は、ここ1カ月ほどの航海で、さまざまな深海生物を発見している。夢に出てきそうな不気味な姿をしたものも少なくない。

 今までに見つかったのは、暗い深海で発光するミツマタヤリウオの仲間、恐ろしい武器を携えた肉食性の海綿動物、背筋が凍るような姿をしたウミグモの仲間、顔のない深海魚などだ。(参考記事:「【動画】幻の「顔なし」深海魚を発見、貴重映像」

「クラゲと牙の世界」──主任研究員のティム・オハラ氏は、深海の世界をそう表現した。そんな深海で見つかったのが、オハラ氏が今まで見てきたなかで最も恐ろしい姿をした生物だった。ミナミシンカイエソ(Bathysaurux ferox)という深海魚だ。

 この魚は、オーストラリア東部の深海で、海底をかき回しながら漁獲する桁網(けたあみ)と呼ばれる漁法を使って採集した。オーストラリアの国立魚類コレクションを管理しているジョン・ポゴノスキ氏は、即座にこれを珍しい肉食魚だと判別した。(参考記事:「【動画】「歩く魚」を撮影、種は不明」

 ポゴノスキ氏は、プレスリリースにこう記している。「ミナミシンカイエソの特徴である長い付け根の背ビレに気づきました。同じ属のもう一つの種、シンカイエソ(Bathysaurus mollis)は、背ビレの付け根が短く、尾のそばに小さな二つめの背ビレがあります。巨大な目と歯は、待ち伏せをする捕食動物によく見られる特徴です」

 シンカイエソの仲間は、成長すると体長60センチほどになる。その特徴は、鋭い歯が生えた口と、頭から飛び出している緑がかった黒い色の大きな目だ。(参考記事:「目玉がかわいすぎる生き物、深海で見つかる」

 この魚が生息するのは、深さ約900~2500メートルの深海。人目につくことはほとんどないが、大西洋にも、インド洋から太平洋西部にかけての海にも分布している。

 深海で生きるシンカイエソは孤独な生物だ。数も少なく、単独で生活する。この深海のモンスターは、待ち伏せをして捕食する。普段はじっと待ち続けており、獲物が近づいてくると大きな口で捕らえる。口には、獲物を奥のほうに引き込むたくさんのしなやかな歯がついている。

 このような深海では、食料を見つけるのは至難の業だ。繁殖の相手を見つけるのはなおさら難しい。シンカイエソは、繁殖のチャンスを最大限に高めるために、オスとメスの両方の生殖器官を持つ雌雄同体に進化している。そのため、同種の魚とさえ出会えれば、相手を選ばずに繁殖することができる。

 インベスティゲーター号に乗っているのは、世界各地から集まった30名の研究者や技術者からなるチーム。6月中旬までオーストラリア東部の深海探査を続ける予定で、その調査結果は、海底地図の作成や、この海域の多様な生物を理解するために活用されることになっている。(参考記事:「深海の最新写真10点、奇妙で神秘的なガラパゴス沖」

文=Sarah Gibbens/訳=鈴木和博

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