湖が消えた… 中米「乾燥回廊」に最悪級の干ばつ

干上がったグアテマラのアテスカテンパ湖、気候変動が一因か

2017.05.23
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【動画】かつては水をたたえ、多くの魚がすんでいたグアテマラのアテスカテンパ湖が干上がった。近隣の住民は飢えに苦しみ、移住を余儀なくされている。(解説は英語です)

「湖が丸ごと干上がったのを見たら、泣きたくなりますよ」――グアテマラのアテスカテンパ湖岸で、17歳の漁師ウィルマン・エストラーダさんがAFP通信に語る。

 この数年、エストラーダさんやこの地域の人々は、かつては豊かだった湖が、泥の水たまりがいくつか残るだけの場所になっていくのを目にしてきた。今では、貝殻と動けなくなった小舟が湖底に散らばるばかりだ。(参考記事:「干上がった湖、米国の干ばつ深刻化」

 AFPのカルロス・マリオ・マルケス氏のレポートによれば、アテスカテンパ湖ではこの2年間干ばつが続いており、この町の漁業と観光産業は事実上、壊滅状態にある。

 AFPのビデオレポートでは、「食糧不足のために死にかけている子どもがいます」とヘクター・アギーレ氏が述べている。アギーレ氏は、中米の先住民コミュニティ擁護団体マンコムニダード・トリナシオナルと共に、アテスカテンパでの救済活動に尽力している。グアテマラではこの10年間に、栄養不良状態にある5歳未満の子どもの率が上昇した。

「この問題が一目でわかる写真はありませんが、中米人にとっては恥ずべきことです」とアギーレ氏は話す。

干ばつの10年

 アテスカテンパ湖は、中米の「乾燥回廊」として知られる、グアテマラからパナマにかけての西部地域にある。この地理的な要因のために、周期的に海面温度が上昇する「エルニーニョ」の影響を特に受けやすい。この現象の結果として、乾燥回廊を含む一部の地域では、雨期の降水量が例年より少なくなることがある。ただ、この地域が現在見舞われている干ばつは、過去10年間で最悪レベルのものである。

 2013年に『ネイチャー』誌に発表された研究では、温室効果ガスの大気への排出が続けば、エルニーニョの発生頻度が増える可能性があると予測されている。(参考記事:「温暖化で極端なエルニーニョ/ラニーニャ倍増」

 長期的に記録したデータがないため、気候変動がアテスカテンパ湖の枯渇の原因であると断言することは難しい――こう話すのは、米テュレーン大学の科学者であり、ナショナル ジオグラフィックが支援するミャー・シャーマン氏だ。アマゾン地域社会における干ばつと洪水の影響について研究している。

 資源の採取や不適切な農業慣行など、その他の人間の活動にも問題があるかもしれない。とはいえ、気候変動が一因である可能性は高い。「気候変動の結果、ラテンアメリカでは不安定な気候や異常気象が全般的に増加することが予想されます」とシャーマン氏は述べている。(参考記事:「珍現象:エルニーニョで砂漠が一面の花畑に」

淡水の消失

 乾燥回廊における近年の日照り続きは、グアテマラの人々にとりわけ深刻な影響を及ぼしている。地方に住む人々にとって、農業や飼育業は生活の糧であり、都会に移り住む人の多くも過密や失業に直面している。(参考記事:「コーヒー生産、病気と気候変動で打撃」

 国連は2016年の夏、乾燥回廊の干ばつに見舞われた地域社会を支援するために1700万ドルを要請した。報告によれば、アテスカテンパ湖の干ばつの影響を受けた人々に、豆、米、油が支給されたという。しかし先住民コミュニティは、この支給を受けるのに苦労している、とアギーレ氏はAFPに対して語っている。

 国連食糧農業機関(FAO)のホセ・グラツィアーノ・デ・シルバ事務局長は2016年6月、国連の会合に際して、グアテマラの深刻な干ばつは長期にわたり多面的に取り組むべき問題であると強調した。人道支援を行うだけでなく、乾燥回廊で貧困と食料不足を引き起こす構造的な原因の解消すべきとデ・シルバ氏は主張する。

 人間の活動により重大な影響を受けている水域は、アテスカテンパ湖だけではない。ボリビアのポオポ湖は、氷河が解け、注ぎ込んでいた川が流れを変えたことにより、わずか2年で姿を消した。中東ではアラル海が1960年代以降、灌漑のために川の流れを変えられたことで10分の1にまで小さくなってしまった。(参考記事:「アラル海からの警鐘」

 湖とそこにつながる河川は、多くの地域社会にとってきわめて重要な収入源であるため、干ばつは気候変動難民の増加にもつながる。国連の推定によれば、2008年以来、2250万人もの人が気候または気象のために移住を余儀なくされている。(参考記事:「ソマリア、干ばつで大量餓死の危機高まる」

 しかし、アテスカテンパ湖周辺の住民は、これから雨が降って湖の水と自分たちの生活が戻ってくるという望みを失っていない。エストラーダさんはこう話す。「雨が降って湖がまたいっぱいになるか、確かめないわけにはいきません」

文=Sarah Gibbens/訳=山内百合子

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