【動画】最悪! 子ゾウに若いオスが乱暴、その理由は

子ゾウについた母親の匂いをメスの匂いと混同?

2017.05.10
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【動画】ゾウの赤ん坊が大人のゾウに投げ回されるショッキングな映像(解説は英語です)

 子ゾウが大人のオスによって何度も持ち上げては放り投げられる――そんな心の痛む動画が南アフリカから発信された。

 この出来事を記録したのは、ネイチャーガイドのジェニ・スミシーズ氏と写真家のロイド・カーター氏。アド・エレファント国立公園内の水飲み場を車で通り過ぎようとしたときのことだった。車の窓ガラス越しに撮影された動画には、立ち上がるのもやっとな子ゾウが、交尾の相手を求めていると見られる若い大人のオスによって乱暴に地面に叩きつけられる様子が映っている。

 ついには、母親と思われるメスが子ゾウを守り、オスは去っていった。(参考記事:「【動画】母親ゾウ、リカオン集団からわが子を守る」

「これは私がこれまでに見た同種の行動の中で、最悪のものです」とゾウの行動の専門家であり、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある、動物保護団体エレファント・ボイスの共同創立者ジョイス・プール氏は述べている。若いオスがこのような行動を取るのは見たことがあるが、これほどひどいことはまれだという。

 オスがこのような攻撃性を見せたのは、メスの生殖ホルモンを区別できなかったことが原因ではないか、とプール氏は考える。

 プール氏の説明によると、メスのゾウは発情期に入る、つまり妊娠できるようになると、生殖可能な状態であることを示す匂いを発する。交尾の相手を求めるオスは、単独でさまざまな家族や群れの間を旅し、この匂いを発しているメスを探す。

 動画に登場するオスは、子どもを産んだばかりの母親が発するホルモンの匂いを、発情期のメスの匂いと混同している可能性がある。(参考記事:「【動画】赤ちゃんゾウを穴から救出、母の元に」

「問題のオスは20歳代です」とプール氏は説明する。「この年齢層では、子どもを産んだばかりの母親と受け入れ態勢にあるメスの匂いを嗅ぎ分けられません」

 もっと歳のいったオスなら、匂いを区別できるという。オスのゾウは、だいたい17歳で性的に成熟する。つまり、動画のオスは、この重要な技術を身につけ始めたばかりということだ。子ゾウはまだ小さいことから、母親と同じような匂いがしたと考えられ、それがオスを混乱させ、苛立たせた可能性がある。オスのゾウが性的に最高の状態に達するのは40歳から50歳頃だ。

 プール氏は、この子ゾウを助けたメスは乳を分泌するために膨らんだ乳房をしており、これが母親だろうと考えている。(参考記事:「【動画】ライオンが奪ったカメラに写っていたのは」

 ゾウの妊娠期間は大抵の動物より長く、約22カ月である。出産したメスは、その後2年間は発情しないのが普通だ。

 この動画で周りにいる牙のないゾウたちは、おそらく同じ家族集団のものだろう。ゾウはメスを中心とする群れを作るが、その規模は母親1頭と子ども1頭という小さな場合もあれば、40頭に達する大きな場合もある。ゾウは子どもが産まれると、それを祝うように大きな鳴き声を上げることが多い。プール氏によれば、これは好ましくない行動とも考えられ、この大きな声に通りがかったオスがひき寄せられるという弊害がある。

 アド・エレファント国立公園のウェブサイトによると、この公園内には600頭を超すゾウが生息している。1931年に公園が設立されたときには、わずか11頭だった。象牙を狙った猟によって、一時は絶滅寸前に追い込まれた。生息数は大幅に増加したものの、ゾウはいまでも多くの地域で密猟の脅威にさらされている。(参考記事:「巨大な牙もつ50歳のゾウ、密猟者に殺される」

 動画に映っているゾウの多くには牙がない。このように遺伝的適応をしたために、何十年もの間虐殺を免れることができたのかもしれない、とプール氏は指摘している。(参考記事:「【動画】くしゃみをする子ゾウがかわいい」

文=Sarah Gibbens/訳=山内百合子

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