1日5億本、「ストローいりません」が米国で拡大中

鼻に刺さったウミガメを助ける動画で加速、海洋ごみ削減に向けた不使用運動

2017.04.20
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使用禁止に反対する業界

 米国化学工業協会プラスチック市場責任者のキース・クリストマン氏は、プラスチックのストローを違法にしようとするどんな運動にも業界は反対するとしている。

 個別の製品を禁止すると、しばしば「意図していなかった結果」を招くことがある、とクリストマン氏は指摘する。代替製品が、禁止されたプラスチック製品よりも環境に有害だったこともある。また、生分解可能とうたわれていた製品が実はそうではなかった例もあった。さらに厄介なのは、消費者の行動の変化だ。サンフランシスコで発泡スチロール製品が禁止されると、発泡スチロールコップのごみは減ったものの、今度は紙コップのごみが増えてしまった。

「本当に必要なのは、問題の最大の元となっている国々で適切な廃棄物管理の仕組みを作り上げることです。急成長するアジアの国々には、そのような仕組みが存在していません」

 ストロー不使用運動では、他の運動と違って法律や規制を変えようとしているわけではない。ただ単に、ストローを出されても「ノー」と言う習慣をつけようと消費者に促しているだけだ。運動が成功するとしたら、この点が功を奏するかもしれない。

2003年のSARS流行が普及の発端に

 1930年代、ストローといえば、レストランにある炭酸飲料の機械のそばで見かけるくらいのものだった。それが今では、ごく当たり前のようにどこにでもある。だがその一方で、最も普及した不必要な製品のひとつでもある。世界でどのぐらい使われているかというデータはないが、米国立公園局によると、米国だけでも1日5億本のストローが消費されている。しかし実のところ、医療目的以外で飲み物や水を飲むのにストローは必要ない。

 香港を拠点に、海洋ごみの削減に取り組む「オーシャン・リカバリー・アライアンス」の創立者ダグラス・ウッドリング氏は、「10年前、ストローは今ほど普及していませんでした。バーで飲み物を注文すればついてきましたが。それが今では、水のグラスにさえストローがささって出てきます」と話す。「その理由のひとつは、人々が感染症に敏感になっているせいではないかと思います」

 ウッドリング氏によると、2003年にSARSが流行して以来、ストローの消費量が上がりはじめたという。中国で発生したSARSはアメリカ大陸やヨーロッパなど20カ国以上に拡大し、8098人が感染、774人が死亡した。(参考記事:「地球の悲鳴 人と動物を襲う感染症」

「突然、ストローが爆発的に売れ出しました。すると、消費者はストローを使うのが当たり前だと思うようになり、なければならないものだと思い込んでしまいました。本当は、ほとんどの人には必要のないものなのですが」

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