サイの角、南アで取引解禁へ 密猟増加の懸念も

禁止措置の継続を求めた政府による上訴が棄却される

2017.04.13
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ジョン・ヒューム氏が所有するサイ牧場のシロサイ。同氏は、南アフリカ国内でのサイの角の取引禁止を不服として裁判を起こした牧場主の一人だ。(PHOTOGRAPH BY WALDO SWIEGERS, BLOOMBERG/GETTY)
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 南アフリカ国内でのサイの角の売買が、近く合法化される。南アフリカ政府の発表によると、同国の憲法裁判所は、サイの角の取引禁止を継続するように求めた政府による上訴申請を棄却した。(参考記事:「世界最大のサイ牧場の「すばらしい写真」」

 南アフリカ政府は2009年、密猟の急増を受け、サイの角の取引禁止を命じた。これに対し、取引再開を望むサイ牧場の所有者たちは、環境省を相手に訴えを起こしていた。今回、この法廷闘争に終止符が打たれたことになる。(参考記事:「血に染まるサイの角」

 下級裁判所は牧場側を支持したが、政府が上訴して裁判が続いていたため、禁止令は有効とされてきた。今年に入って政府は、敗訴した場合に備え、取引を管理するための新たな規制案を公表するなど合法化の準備も始めていた。新たな規制案では、許可を得れば誰でもサイの角を売買でき、また外国人は「個人的な用途」のためなら2本まで角を国外へ持ち出せるようになる。

 なお、国際条約により定められている国際取引の禁止は、今後も継続される。(参考記事:「サイの角の国際取引、解禁案を委員会が否決」

世界の7割のサイが南アフリカに

 南アフリカには、世界に2万9500頭いるサイのうち、70パーセントが生息している。サイは密猟の危機にさらされており、減少を続けている。保護活動家は、国内取引の合法化により、サイを取り巻く状況が悪化することを懸念している。(参考記事:「サイの密猟が過去最高に、南アフリカ」

「取引禁止が解除され、新たな規制が公布されれば、密猟が大幅に増えるでしょう。東アジア地域で高まる需要に応えるために、密猟者はこの大きな抜け穴を利用するはずです」。南アフリカ野生生物・環境協会のモーガン・グリフィス氏は、ナショナル ジオグラフィックの取材に対してそう語っている。新たな規制はまだ草案の段階で、環境省は現在、一般からの意見を集めて検討を加えている。ヨハネスブルクの環境法律家キャサリン・ウォーバートン氏は、この規制案が完成すれば、必ず法廷で異議申し立てが行われるだろうと述べている。(参考記事:「角の取引合法化でサイを絶滅から救えるか」

南アフリカで1年間に密猟されるサイの数(NG STAFF. SOURCE: TRAFFIC)
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 人間の爪と同じ成分から成るサイの角への需要は、主にベトナムと中国で高く、高価な彫刻に加工されたり、何にでも効く薬として使われたりしている。サイの密猟は過去10年間で急増。2016年に南アフリカで密猟されたサイは1054頭にのぼり、前年よりは減ったものの、2007年の13頭からは大幅に増えている。

「新たな規制の内容は、国際市場での角の販売を可能にしたいと考える個人のサイ所有者や環境省の期待に沿ったものです」とグリフィス氏は言う。南アフリカ政府は裁判で禁止措置の継続を訴えてきたが、同国のエドナ・モレワ環境大臣は、保護活動を推進するための方策として、取引の合法化を支持することを表明している。一方の反対派は、南アフリカ国内ではサイの角に対する需要はほとんどないことから、国内で販売される角はすべて国外へ密輸されるだろうと訴えている。(参考記事:「史上最大、サイ100頭の空輸計画」

【関連動画】角を採るためにサイを飼育することの是非は?
世界最大というジョン・ヒューム氏のサイ牧場とはどんな場所なのか。(解説は英語です)

 判決の翌日に出された発表文の中で、モレワ環境相は次のように述べている。「我々は憲法裁判所から下された命令の内容を精査していますが、注意していただきたいのは、今回の判決により、サイの角の国内取引に対する規制が完全に撤廃されると解釈すべきではないということです」。すなわち、サイの角や角を使った製品を売買し、輸送し、所有するためには、州政府による許可が必要となる。(参考記事:「フォトギャラリー:世界最大の「サイ牧場」を撮影」

 前出の法律家ウォーバートン氏は、憲法裁判所が取引禁止令そのものに関して判断を下したわけではないことを指摘する。裁判所は単に、禁止令を覆した下級裁判所の判決に対する政府の上訴を棄却しただけだ。そしてその理由も、環境省が上訴の手続きを適切な手順で進めていなかったというものである。(参考記事:「ゾウ大国ボツワナ、象牙取引の全面禁止を支持」

文=Rachael Bale/訳=北村京子

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