海底下1万mに生命か、深海の火山から有機物

マリアナ海溝に近い海底火山、地球最深の生命圏を示唆

2017.04.12
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鉱物の反応が微生物のエサに

 プルンパー氏の研究チームは、蛇紋岩と呼ばれる岩石の中で見つかった有機物を分析した。蛇紋岩とは、上部マントルのかんらん岩が沈み込み帯から出た水と反応してできる鉱物のことで、いくつかの種類がある。この蛇紋岩化作用の過程で、微生物のエサとなる水素とメタンガスが発生する。(参考記事:「蛇紋岩化反応=歳末バーゲンセール」高井研『青春を深海に賭けて』

蛇紋岩は、上部マントルのかんらん岩が水と反応して生じた鉱石。(PHOTOGRAPH BY DE AGOSTINI PICTURE LIBRARY, DE AGOSTINI, GETTY IMAGES)
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 蛇紋岩化作用は海底の熱水噴出孔などでも見られ、微生物が生息できる環境を作り出している。しかし研究チームは、発見した有機物について、さらに深い場所に生息してガスを食べる微生物による排泄物なのではないかと考えている。泥に含まれていた炭化水素と脂質を分析した結果、他の細菌の出す排泄物にとてもよく似ていることがわかった。とはいえ、今のところはまだ何も確定していないと研究チームは断っている。

「これらの微粒子は確かに生命の存在を示唆していますが、論文の執筆者も認めているように、その生命がどこから来たかということに関してははっきりしていません」と、米ウッズホール海洋研究所で蛇紋岩化作用について研究しているフリーダー・クライン氏は言う。

 有機物が外部から入り込んだ可能性もあるが、いくつかの確認項目のうち、炭酸ガスについては検査の結果否定された。クライン氏は論文の結果を高く評価しているものの、有機物が地殻など別の場所から紛れ込んだという可能性は捨てきれないとしている。

地球外生命はこうした環境にいる?

 1960年代に蛇紋岩化作用の研究が始まると、それがいたるところで発生していることがわかった。大陸同士がぶつかり合う部分、熱水噴出孔、かつて海の底だった山岳地帯などに見られる。

 地球上では珍しくない現象であり、極限状態でも生命を支えることのできる可能性を秘めている点が、地球外生命を探す研究者たちの興味を引いた。

「地球上で研究しているこの作用と直接つながるような作用が、太陽系のほかの場所で起こっているかもしれません」と、クライン氏。

 なかでも注目されているのが、木星の衛星エウロパと、土星の衛星エンケラドスだ。どちらも氷に覆われているが、その下には海が広がっていると考えられている。(参考記事:「木星の衛星エウロパ、水噴出の可能性高まる」「土星の衛星エンケラドス、氷の下に全球を覆う海」

 エンケラドスには、地殻変動が起こっていることを示唆する証拠もある。地殻変動があれば、プルンパー氏のチームが研究しているような沈み込み帯が形成されるが、これもまだはっきりとはわかっていない。

「岩石惑星でかんらん岩が発生する場所なら、蛇紋岩化作用もおそらく起こっていると考えられます。光合成がないところでは、それが生命を支える物質を作り出すことができるでしょう」と、プルンパー氏。

 しかし、地球外生命を探すにしても、地球上で行われている研究と同じ問題にぶつかるであろうことに変わりはない。微生物が潜んでいるかもしれない地下深くまで到達するのが不可能であれば、間欠泉や岩石、そのほか地下深くから掘り出したサンプルを分析して解釈するしかないということだ。

 深海掘削によって採取したサンプルは、「瓶に入れられた手紙のようなものだと思います」と、プルンパー氏はいう。「地下から掘り出した瓶を開け、何が起こっているのかを推測しようとしているのです」

文=Claudia Geib/訳=ルーバー荒井ハンナ

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