【動画】微生物が放つ渾身の一撃、ガトリング砲も

プランクトンのミクロな戦いを高解像度カメラがとらえた

2017.04.10
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【動画】獲物に銛(もり)を打ち込むプランクトン(解説は英語です)

 まずは上の動画を見てほしい。動画の中で動き回っている奇妙な塊はなんだろう? 動物か、植物か、それとも鉱物?

 実はどれでもない。これは渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)と呼ばれる単細胞生物で、動物でも植物でもない原生生物に分類される。地球上の生命というより、エイリアンのような形をしているように見える。(参考記事:「エイリアンのようなクモ発見、枯れ葉に擬態」

 この生物を観察したカナダ、ブリティッシュコロンビア大学の生物学者グレッグ・ガベリス氏は、「顕微鏡で観察すると、装甲に身を固めて疾走する宇宙船のように見えます」と言う。「別の渦鞭毛虫に出会うと、相手に対して小さな飛び道具を繰り出します」

 事実、この海洋プランクトンたちは軍拡競争に余念がない。ガべリス氏らは最近、渦鞭毛虫のなかでも特に戦いに適応した体をもつ、ポリクリコス属とネマトディニウム属に関する論文を発表した。

武装して戦うプランクトン

 ガベリス氏らの研究は困難を極めた。野外で渦鞭毛虫のサンプルを収集しても、3分の1程度しか使えなかったという。彼らは、ポリクリコス属とネマトディニウム属の渦鞭毛虫が、ほかの渦鞭毛虫を攻撃するために使う飛び道具のしくみについて、初めて3次元モデルを構築した。

 ポリクリコス属の体には「刺胞(しほう)」というカプセルがある。ほかの渦鞭毛虫を見つけると、刺胞が収縮して内部の圧力を高め、針を発射する。針は水中を勢いよく進み、獲物の装甲に突き刺さる。針の根元は長い繊維とつながっていて、獲物をたぐり寄せるための引き綱の役目を果たす。獲物が十分近くにきたら、渦鞭毛虫は自分の細胞膜を脱いで獲物を丸のみにする。(参考記事:「【動画】ウミヘビが大きなウツボを丸のみに」

 ネマトディニウム属も、よく似た刺胞をもっている。ただ、ポリクリコス属とは違い、11~15個の刺胞が環状に並んでいて、すべてを同時に射出する。そのため、「ガトリング砲」(円筒型に束ねた多数の銃身を回転させて連射を行う機関砲)の異名をとる。(参考記事:「美しくも危険な「電気クラゲ」にご用心」

 ガベリス氏は、「ガトリング砲での武装は、やりすぎのように見えますね」と認める。けれども、硬化シリカの装甲や毒胞、さらにはさまざまな飛び道具で武装した渦鞭毛虫を本当に食べたいなら、それなりの武器が必要だという。

 渦鞭毛虫の戦いは、ミクロのスケールで繰り広げられる。渦鞭毛虫にとっての1ミリは、人間にとってのシロナガスクジラほどの大きさになる。

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