【動画】ヘビの中から人間の遺体が見つかる。(閲覧注意:残酷な映像を含みます)

 動画は明瞭でなく、わかりにくい。たくさんの人々が見守る中で、男たちが巨大なヘビの腹を切り裂いてゆくと、中に何かがあることがわかる。そこにはいったい何があるのか。なぜこのヘビはこれほど注目を集めているのだろうか。

 やがてその答えがわかる。成人男性が丸ごと飲みこまれていたのだ。

 現地の報道によると、体長7メートルほどのヘビの中から見つかった遺体は、インドネシアのスラウェシ島のサルビロ村に住む25歳のアクバル氏。近くのパーム油のプランテーションで働いていたが、3月26日に行方不明になっていたという。

 このヘビはアミメニシキヘビだったと報じられている。世界最大級のヘビで、成長すると体長6メートル以上、体重50キログラム以上になる。(参考記事:「アミメニシキヘビの単為生殖を初確認」

 ビルマニシキヘビなどと同じく、アミメニシキヘビも獲物を殺してから飲みこむ。そのため、アクバル氏も生きたまま飲みこまれたとは考えにくい。(参考記事:「動物大図鑑 ビルマニシキヘビ」

息ではなく心臓を止める

 一般的に、ニシキヘビのほか、ボアやアナコンダなどのヘビは獲物を締め付けて窒息させると考えられてきた。しかし、2015年の研究から、こういったヘビは血の流れを止めることによって、窒息させるよりもはるかに早く獲物を殺すことがわかっている。(参考記事:「ヘビを締め殺すヘビ、驚異の「締め付け力」を測定」

 米国ペンシルベニア州カーライルのディキンソン大学で脊椎動物の生態について研究しているスコット・ボバック氏は、このタイプのヘビがどのように獲物を殺しているのかについて、2015年にナショナル ジオグラフィックの取材に答えている。

 ボバック氏によれば、「ヘビが締め付ける力に心臓が力負けする」という。ヘビが強い力でうまく締め付けると、わずか数秒で心臓に流れる血を断てるそうだ。(参考記事:「世界初の動画、巨大ヘビがハイエナをのみ込んだ!」

 獲物を仕留めたヘビは、ワニやハイエナ、ときに他のヘビなど、驚くほどの大きさの動物をも飲みこむ。通常、飲みこむ前に大きさを測ろうとするが、目測を誤ることもあるようだ。2005年には、米国フロリダ州で大きすぎるワニを飲みこもうとして破裂したニシキヘビが見つかっている。(参考記事:「ヘビ対ワニ、どのように飲み込むのか」

邪魔になるのは肩甲骨

 しかし、ヘビが人間を飲みこむという事例は極めて珍しい。

 シンガポール動物園の研究員でニシキヘビの専門家であるメアリー=ルース・ロウ氏が英BBCに語った内容によると、今回の事例では、ヘビが人間を丸呑みする際に邪魔になるのは肩の部分だけだという。

「障害になるのは、簡単にはつぶせない肩甲骨です」

 今回のヘビの珍しい行動と、パーム油産業に起因する森林伐採との関連性を指摘する者もいる。インドネシア、マカッサルにあるハサヌディン大学の講師ラーマンシャー氏もその一人だ。

 ラーマンシャー氏は、インドネシア紙「ジャカルタ・ポスト」に対し、「生息地が破壊されているため、ヘビの食料も減っています。そのため、パーム油のプランテーションまで獲物を探しに来たのです」と話している。

 パーム油は、食用から石けんまで、一般家庭向けのさまざまな商品に広く使われている。オランウータンやスマトラトラなどの動物の生息地が失われているのは、パーム油産業によるところが大きい。(参考記事:「オランウータン 樹上の危うい未来」

 この恐ろしい事件の後、スラウェシ島のパーム油プランテーションの労働者たちは外出を控えているという。

文=Sarah Gibbens/訳=鈴木和博