南米で新種ヘビ3種を発見、1種は「冥界の番犬」

すでに深刻な絶滅の危機にも、エクアドルのサンゴヘビモドキ属

2017.03.28
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エクアドルから発表された新種のヘビ3種の1つ、Atractus pyroni。新種を報告する論文に使われた正基準標本だ。 (Photograph courtesy Alejandro Arteaga)
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 ヘビの中で最も多様なサンゴヘビモドキ(Atractus)属に、新たに3種が加わった。そのうちの1種には、ギリシャ神話に登場する冥界の番犬「ケルベロス」の名が与えられた。

 そのAtractus cerberusはこれと言って印象的な姿をしているわけではない。体の色は茶色と黄色で、長さは30センチほど。生息地は南米エクアドルにあるパコチェ野生生物保護区で、境界付近の森の岩や倒木の下に隠れるように暮らしている。

 しかし、生息地からわずか数キロ先では、大規模な石油精製所の建設が2008年から始まっていて、約500ヘクタールもの森林が伐採され、丸裸になっている。この荒れ果てた光景を見て、研究者たちは黄泉の世界を思い浮かべた。ギリシャ神話のケルベロスと同じように、この新種のヘビも地獄に通じる門の番をしているのだと。

 Atractus cerberusを含めた新発見の3種は、すべて体色が茶色や赤みがかった中南米原産のサンゴヘビモドキ属である。この属のヘビは、人目につかないような場所でひっそりと生息しているため、長い間、科学者たちも研究できていなかった。

地味な色合いの地下生活者

「確かに、未知のものは人を引きつけるもので、サンゴヘビモドキ属も最も興味深いヘビのひとつです」とエクアドルの爬虫類学者で、この新種の共同発見者であるアレハンドロ・アルテアガ氏はメールで述べている。「サンゴヘビモドキ属は小型で隠れるように暮らしていて、特定が難しく、多様で、研究は進んでいません。そのため、新種が発見される機会がほかのヘビより多いのです」

 こうしたヘビたちは外見にこれといった特徴がなく人気者になりにくい、と言うのは米ジョージ・ワシントン大学の爬虫類学者で、ナショナル ジオグラフィックが支援するアレックス・パイロン氏だ。彼はこの研究論文の共著者ではないが、資金援助を行った。

「ハーレクインカエルやダーウィンフィンチには何百もの種があって、どれも鮮やかで派手な見た目をしています。こうした生物についてなら、生物学の入門クラスで習います」と言う。「一方、サンゴヘビモドキ属は多様性という点ではまさにトップクラスに入りますが、すべて地味な色で、地下で生活しているため、ほとんどの人の関心を引かないようです」(参考記事:「絶滅回避へ動き、パナマの超小型ハーレクインカエル」「ダーウィンフィンチのゲノム解読が広げる種の概念」

 実際のところ、サンゴヘビモドキ属は地球上で最も多様なヘビで、140種が含まれる。さらに、未知の種もいるのは確かだ。過去10年だけで、新発見の33種がこの属に加わっている。

「生物多様性の代表的な例でありながら、正当に評価されていません」とパイロン氏。(参考記事:「謎多きヘビの新種3種を同時に発見、南米」

 3月15日付の科学誌「ZooKeys」に掲載されたAtractus cerberusに関する論文では、30種のサンゴヘビモドキのDNAを使って新たな系統樹が構築された。論文にはまた、Atractus cerberusの他にも2種の新種のヘビについても記載されている。

 その2種のうち、Atractus esepeの種名は「種」を意味するスペイン語の発音に由来する。エクアドルの科学者らが、サンゴヘビモドキ属のヘビを仲間の間でこう呼んでいたためだ。もう1種は、パイロン氏の名前をとってAtractus pyroniと名づけられた。アルテアガ氏とそのチームが、パイロン氏に内緒で名誉を与えたのだ。

「私は論文をじっくり読んでいましたんですが、アレハンドロはしきりに『そこじゃない、もっと下を読んで。下にスクロールして』と言いました」とパイロン氏は話す。「このように発見に自分の名前が永遠に残されるのは、とても気恥ずかしいものです」

ケルベロスに迫る危機

 Atractus esepeやAtractus pyroniが絶滅の危機にあるかを判断するにはまだ情報が足りないが、Atractus cerberusは絶滅の危機に直面している可能性が高い。アルテアガ氏をはじめとする研究者たちはパコチェ野生生物保護区の外でこのヘビを見つけたことがない。4900ヘクタールほどの保護区は、森林伐採を免れた「島」のような存在だ。

 パイロン氏によれば、新種の3種をはじめとする世界中のヘビは、人間の活動による生息地を失う重大な脅威にさらされている。皮肉なことに、Atractus pyroniもそうだが、何十種ものヘビが、森林が伐採されたことで初めて発見されている。たとえば、1995年にマレーシアの森林道路の脇で死んでいたヘビは、8000万年前から生き延びてきた未知の種だった。(参考記事:「車にひかれたヘビ、実は新種だった、キルギス高地」

 エクアドルでは、環境保護と産業振興の間の対立が著しい。間もなく退任するラファエル・コレア大統領は海外からの投資を積極的に誘致していて、政府を批判した環境保護活動家らを厳しく取り締まっている。エクアドルのヤスニ国立公園には多くの生物種が生息するが、コレア政権は2013年に公園内での石油探査を許可した。探査禁止の見返りに、世界中から集まった36億ドルの資金を提供するという提案を断ってのことだ。(参考記事:2013年1月号「石油開発に揺れる熱帯雨林」

「中国をはじめとする多くの海外資本が鉱物資源を強く求めていて、これが自然環境の保全と保護に対する深刻な脅威になっています」とパイロン氏。「アマゾン川流域の地下には大量の石油や資源が眠っていて、みんながそれを欲しがっています。環境よりカネなんです」(参考記事:「エクアドル、石油“非開発”費用を要請」

文=Michael Greshko/訳=山内百合子

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