「サルが助けてくれた」、アマゾンの遭難者が告白

密林の中を9日間さまよった男性を無事に保護、ボリビア

2017.03.28
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驚きの突破口

 パチャママに祈る眠れぬ夜がさらに二晩続き、ロムロとティブルシアは、「償いが受け入れられ、マイコールさんの魂とようやく接触できました」と一同に告げた。「靴下が出てきたことで、ずっとやりやすくなりました」と。「マイコールさんは近く解放されます。今後数日で、手がかりがもっと多く見つかるはずです」

 翌朝、レンジャーたちと私がボートをロッジ近くに係留していると、川沿いから叫び声がした。「ボート! ボート! おーい!」とかすかに聞こえた。レンジャーたちは大急ぎでボートのエンジンをかけ、声の方へと船を出した。

 水際で怒号のように叫んでいたのは、マックス・アドベンチャーズの2人のガイドだった。「行方不明者を見つけたぞ!」と2人。レンジャーは信じられなかった。「本当か? 生きてるのか? 死んでるのか?」

「生きてる!」ガイドの大声が返ってきた。

 ついにマイコールさんが見つかった。熱帯雨林で9日間生き延びたことになる。発見地点は、マックス・アドベンチャーズのキャンプ場から1マイルも離れていない場所だった。マイコールさんの姉妹のロシオさんも捜索に加わり、フェイサー氏や数人のガイドと行動していたが、叫び声を聞いて走り出した。マイコールさんは大きな棒を杖にして、木々の間に立っていたという。

 ロシオさんは後に、「マイコールが私だと分かるかどうか、確信がありませんでした」と私に語った。「彼の心が元のままかどうか分からなかったんです」

 マイコールさんはかなり衰弱していた。9日間も熱帯雨林にいたため脱水状態となり、虫刺されや人に寄生するウマバエ、植物のとげなどのせいで皮膚は傷だらけだったし、足首から先も痛々しいほど腫れていた。だが精神的には全く正常だった。疲れ切っていたが、「コーラが飲みたい」と冗談を言った。

 マイコールさんがキャンプ場に運ばれて、涙ながらに家族と再会すると、「やった!」という歓喜の声が上がり、レンジャーもガイドも抱き合ってうれし泣きした。中でもフェイサー氏は感極まり、マイコールさんの父親と抱き合ったときには涙にむせんでいた。

「ありがとう、我々を信じてくれて。ありがとう」とフェイサー氏は泣きながら言った。「あなたがたのチームを信用しないわけがありません」と返した父親も涙ぐんでいた。

蒸発から救助までを告白

 マイコールさんはハンモックに寝かされ、みんなでその周りに集まって、命拾いした体験を静かに聞いた。彼は最後まで川を見つけられなかった。信じがたい話だが、死なずに済んだのはサルが助けてくれたからだという。サルの群れの後をついていくと、群れが彼に果物を落としてくれたり、隠れ場所や水場に毎日連れて行ってくれたりしたそうだ。

 だが、日ごとに彼の体は弱っていった。蚊に食われ、空腹を覚え、希望はどんどん薄れていった。「昨日は本気で神様と約束をした。ひざまずいて、ここから出してくださいと心から願った」と彼は言い、声を詰まらせた。

 姿を消した晩に、不思議な、恐ろしい考えが心に忍び込んだとマイコールさんは明かした。熱帯雨林から出たいという衝動を覚え、抑えることができなかったという。

「それで走り出した」とマイコールさん。「サンダルをはいていたけど、『だめだ、これじゃ速く走れない』と言って脱ぎ捨てた。携帯も懐中電灯も捨てた。走りに走ったあと、ある木の下で止まり、『何てことをしたんだ、何をしているんだ』と考え始めた。そして、戻りたいと思ったときにはもう戻れなくなっていた」

 捜索に当たった面々は、デュエンデが一時的に彼を惑わせ、別の次元に誘い込んでしまったと信じている。異常な考え、シャーマンの証言、奇妙な蒸発といったすべての兆候が、それを示しているとのことだ。

 一方マイコールさんは、そういうことではなかったと主張する。彼はシャーマニズムもボリビア低地の文化も信じず、神だけを信じている。そして、あの晩に自身に何か起こったことが完全には分からないものの、ジャングルで九死に一生を得た経験は決して忘れられないと話した。(参考記事:「シベリアの果てから1万3000キロ! 嘘みたいなサバイバル脱出劇」

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文=Elizabeth Unger/訳=高野夏美

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