「サルが助けてくれた」、アマゾンの遭難者が告白

密林の中を9日間さまよった男性を無事に保護、ボリビア

2017.03.28
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不可解な蒸発

 マイコールさんはマックス・アドベンチャーズのツアーに申し込み、他のツアー参加者とは昨日会ったばかりだったとフェイサー氏は話し始めた。その日の午後、一行はガイドと共に熱帯雨林を探検。キャンプ場に戻ってきたとき、マイコールさんは見るからに興奮した素振りを見せていたという。

「ちょっと変な様子でした」と、フェイサー氏は振り返った。「普通の顔に見えなかったんです」

 マイコールさんの行動に注意を払いつつ、フェイサー氏はロッジにいた旅行者たちを「パチャママ」の儀式に招いた。母なる大地であるパチャママが森に入る許しを与えてくれたことに対し、コカの葉、ろうそく、たばこを使って感謝を示す地元の伝統だ。(参考記事:「ボリビア、伝統衣装まとう女性たちの肖像10点」

 マイコールさんにも儀式に参加してほしいと言ったが断られたとフェイサー氏は言う。そして、ガイドが様子を見に彼のキャビンを再度訪ねたとき、マイコールさんはどこにもいなかった。彼が最後に目撃されてから、いなくなったと分かるまでの時間は、たったの5分間だった。

 フェイサー氏とガイドたちは大慌てで、ロッジ中を隅々まで探した。だが、見つからなかった。次いで、懐中電灯を持って熱帯雨林に入り、朝の5時まで探し続けたが、成果はなかった。まるで、すっかり消えてしまったかのようだった。

「パチャママの気分を害したからです」とフェイサー氏。「儀式に参加したがらなかったのですから」

 マルコスや他のレンジャーたちも、うなずきながら互いにささやき合っていた。

 彼らは私に、ここボリビアの低地で人々が抱く自然観を話した。熱帯雨林は強い力を持つ場所で、善悪の両面を持つ神秘的な存在に満ちているというものだ。例えばパチャママに敬意を払わない者がいれば、彼女はデュエンデといういたずら好きの妖精に命じて正気を失わせ、別の次元に隠してしまう。このような信仰は地元の人々の間に深く根付いているため、法律でさえパチャママなどの存在を尊重している。

「私自身やレンジャーたちにとって、これは文化なのです」とマルコスは言った。「デュエンデは実在すると信じています。マイコールさんがデュエンデに連れ去られた可能性はあると思います」(参考記事:「ジャガーになった友、アマゾンの現代版“山月記”」

シャーマンの懸命な祈り

 わらにもすがる思いで、フェイサー氏のガイドの1人が有名なシャーマン、ロムロとティブルシアの夫婦を呼び、マイコールさんを呼び戻してほしいと頼んだ。(参考記事:「シャーマン 精霊に選ばれし者」

 2人は、強力な木の精である「マパホ」のエネルギーをデュエンデが操ってマイコールさんを隠したと信じていた。「彼は私たちの手の届かない遠い所にいます」とシャーマンが告げた。だが、と2人は説明した。複雑な儀式の形で償いをやり遂げれば、彼の魂をこの次元に呼び戻せるだろう。そうして初めて、マイコールさんは森の中で見つかるはずだと。

 マイコールさんの父親、継母、姉妹もキャンプ場に到着した。知らせを聞き、チリから飛んできたのだ。いずれもこわばった顔つきではあったが落ち着いていて、行動計画についてレンジャーやガイドと相談していた。

 次の1週間、レンジャーとガイドたちは1日に8~10時間、1日ごとに捜索区域を変えて、熱帯雨林に消えたマイコールさんをしらみつぶしに探し回った。ロムロとティブルシアも、毎晩明け方まで起きてパチャママへの償いを続け、懸命に役目を果たしていた。だが、わずかなヒントすら誰も見つけられなかった。まるで、彼がどこにも存在しないかのようだった。

 ガイドたちの不安は高まり、マイコールさんの家族も心配になるばかりだった。ロムロとティブルシアもくたくたになっていた。捜索に慣れている多くのガイドたちは、まったく何の痕跡も見つかっていないことが信じられなかった。あるガイドは私に「こんな経験は20年で初めてだ」と話した。

 ところが、マイコールさんが消息を絶ってから苦しみの6日間が過ぎた後、事態が動いた。レンジャーの1人が、泥だらけの靴下の片方を熱帯雨林の林床で見つけたのだ。靴下は家族の元に持ち帰られ、マイコールさんの継母が興奮気味に、息子の物だと確認した。

 シャーマンにとっても、靴下が事態を一変させた。所持品は本人の魂につながる窓であり、霊的な翼に乗って彼のところへたどり着き、現実へと呼び戻す手段だからだ。だが、もう時間がないこともシャーマンは分かっていた。マイコールさんはすでにもう1週間も熱帯雨林で過ごしており、食料も水もほぼない状態だ。この先、彼がどれだけ生きていられるか分からない。(参考記事:「自分の腕を切り落として窮地を脱出した男」

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