トランプ政権で消える? NASA4つのミッション

予算の大幅削減で懸念される宇宙計画

2017.03.23
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2015年2月11日、深宇宙気候観測衛星DSCOVRを搭載して米国フロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられたスペースX社のファルコン9ロケット。(PHOTOGRAPH BY NASA, GETTY IMAGES)
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 米航空宇宙局(NASA)は、太陽系の中でもとりわけ複雑な惑星である地球を50年以上にわたって観測し続け、新たな発見を数多くもたらしてきた。優れた技術力でロケットを開発し、人工衛星を打ち上げることで、私たちの住むこの星を見守り、海洋、気候システムの理解を深めてきた。

 ところが、トランプ米大統領が3月16日に明らかにした2018年度政府予算案で、その貴重なNASAの取り組みへの予算が大きく削られていることがわかった。

 予算案はまだ議会の承認を得る必要があるが、NASAへの190億ドルの予算割り当てのなかで、火星探査、木星の衛星エウロパの接近観測、有人輸送機スペース・ローンチ・システムやオリオン宇宙船などの宇宙探査計画は、ほぼこれまで通り継続される。(参考記事:「MARS 火星移住計画」

 だが一方で、NASAの地球科学ミッションへの予算は大幅に削られている。2015年に打ち上げられた人工衛星の地球観測予算が打ち切られ、今後予定されている3つの人工衛星打ち上げも中止される。

 米コロラド大学ボルダー校の気候科学者ピーター・ピレウスキー教授は、「特定の計画を標的にした細かすぎる攻撃」とコメントしている。トランプ政権は、この予算削減で推定1億200万ドルが節約できるとしているが、3兆ドルを超える国家予算のなかでは微々たる数字で、ピレウスキー氏はその論理的根拠を疑問視している。

 トランプ政権による予算で消えてしまうかもしれないNASAの計画は次の4つだ。

深宇宙気候観測衛星「DSCOVR」

 予算削減対象となっている事業で、すでに宇宙へ打ち上げられているのは、深宇宙気候観測衛星「DSCOVR」のみだ。地球と太陽の間に静止しているDSCOVRは、約150万キロ上空から地球の姿を撮影し、かつてない詳細な変化を記録し続けている。(参考記事:「宇宙から見た地球の1年、NASAが公開」

 2016年には、地球を背にカメラの前を横切る月の写真が公開され、大きな話題を呼んだ。DSCOVR搭載のEPICカメラが撮影したものだ。このカメラは常に地球に向けられていて、オゾン、植生、大気中のちり、雲の高さなどの現象を観測している。(参考記事:「地球の前を横切る『月の裏側』の撮影に成功」

2015年7月6日にDSCOVRが撮影した地球の姿。(PHOTOGRAPH BY NASA)
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 美しい地球の写真は、科学的にも高い価値がある。DSCOVRはほかにも、太陽から噴き出す荷電粒子で起こる太陽風の観測も行っている。

 荷電粒子が地球の磁場に衝突すると美しいオーロラが現れ、さらに強力になると、地上の電力網に障害をきたすほど激しい磁気嵐を起こすこともある。DSCOVR計画のこの部分は今後も継続されると思われるが、地球を見守る観測カメラは打ち切られる見込みが高い。

 米国立大気研究センター気候分析部門の科学者ケビン・トレンバース氏は、運行中の人工衛星の一部予算削減に困惑の色を隠せない。「すでに打ち上げられていて、機能しているものなんです。こういった素晴らしい画像や、これまで見たこともない貴重な情報をもたらしてくれているというのに……」

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