【動画】深海魚のヌタウナギ、驚異の7つの異能力

自分の体を結んで攻撃&防御、酸素がなくても動く心臓ほか

2017.03.17
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世界屈指の異能力魚 チリの漁師が撮影したヌタウナギ。彼らは驚きにあふれ、時に衝撃的だ。

「背骨のないグネグネした海の底の生き物」というと失礼に響くかもしれないが、ヌタウナギには人間を圧倒するほどの個性的な能力がいくつもある。

 ウナギに似た細長い体には心臓が複数あり、目は退化していて、捕食者を粘液で撃退する見事な防御能力と、自分自身の体で結び目を作る鮮やかな攻撃能力が備わっている。(参考記事:「ヌタウナギの目は「退化」、退化で新たな力を得た動物たち」

 口ひげを生やしたこの深海の住人は、世界に80種近く分布している。米カリフォルニア州チャップマン大学の生物学者ダグラス・ファッジ氏によると、多くは小型の無脊椎動物を狩ったり、海底の死骸をあさったりしているという。

 チリのビオビオ州で最近、ヌタウナギを捕獲してその姿に驚いた漁師たちが、岩の上に置いて暴れる様子を撮影した。

 その場にいたリセッテ・エルモシーシャさんはナショナル ジオグラフィックに対し、Eメールで「あんなものは見たことがありませんでした」と語った。「ヘビのようにはいながら海に帰っていくのを、私たちはただただ見つめていました。ヌタウナギが海に帰り、また元のすみかで生きることができてホッとしています」

 ヌタウナギは本当に尊敬に値する生きものだ。その理由を7つ紹介しよう。

スーパースライマー

「ゴーストバスターズ」シリーズに登場する緑色のスライマーも、ヌタウナギにはかなわない。ヌタウナギは危機に陥ったり苦痛を与えられたりすると、即座に体から粘液を放出する。その速さは、1秒足らずの間にカップ4杯分(約960ミリリットル)にもおよぶ。(参考記事:「カギムシが粘液を網のように噴射する方法を解明」

 この粘液には細い繊維が含まれる。このため、ヌタウナギを食べようとする捕食者はえらが詰まってしまうとファッジ氏は説明する。(参考記事:「粘液の浮き袋、浮遊生活を送る貝」

粘液を吹き付けられ、退散するサメ 2012年1月13日—科学者たちはヌタウナギの護身術を初めて記録した。攻撃を受けると、体にある数百の放出孔から粘液が分泌された。

奇術師さながらの脱出芸

 普通、体長30から50センチほどのヌタウナギは、自分の太さの半分という信じられないほど狭いすき間を通り抜けられる。カリー・フリードマン氏らの研究で判明し、2017年1月に科学誌「Journal of Experimental Biology」誌に掲載された。

 そのような脱出が可能なのは、ヌタウナギの皮が他の魚と違って体にぴったりくっついていないからだ。おかげで皮膚の下に大量の血液を貯めることもできる。

「穴を通り抜ける際、血液は後ろへと押し出され、皮と体の間に収まります。尾の部分で圧力が異常に高まることもありません」とファッジ氏。(参考記事:「ヘビの口から這い出るヘビ」

くっついたら超しつこい

 2013年、イタリア沖のティレニア海にいたダニエラ・シルビア・パーチェ氏ら研究者は、ハンドウイルカの噴気孔にヤツメウナギか何かが寄生虫のようにはまり込んでいるのを目撃した。近寄って観察すると、ヌタウナギだった。科学誌「Journal of Mammalogy」誌に2016年に掲載された論文によると、クジラまたはイルカに付着したヌタウナギの初の記録だという。

 ヌタウナギがどうやってイルカの噴気孔にはまり込んだのかは定かでないが、ハンドウイルカは海底の砂に頭を突っ込んで狩りをすることが分かっているため、そのときにヌタウナギと出くわした可能性があるとパーチェ氏は話す。同氏は地中海でイルカとクジラを調査する非営利団体「Oceanomare Delphis Onlus」の代表で、イタリア、ローマ・ラ・サピエンツァ大学の生物学者でもある。

 ヌタウナギはとりあえず何かにしがみついたり、穴に入り込んだりして身を守ったのかもしれず、この場合はそれがイルカの噴気孔だったというわけだ。原始的な生物ゆえに顎を持たないヌタウナギだが、歯に似た突起はある。それにより、噴気孔内部の軟組織に自分の体を固定できたのだろう。

 噴気孔が完全にふさがれれば死んでしまうが、このイルカは苦しそうな様子を見せながらもまだ呼吸できていた。群れの仲間たちが海中に潜る中で海面に留まっていたとパーチェ氏は振り返る。1カ月後、パーチェ氏は同じイルカが生きているのを確認。ヌタウナギは消え、元気そうだった。(参考記事:「クジラが鼻に魚を詰まらせ死亡、オランダ」

噴気孔にヌタウナギがはまり込んだハンドウイルカ。2013年にイタリア沖を泳いでいた。(PHOTOGRAPH BY OCEANOMARE DELPHIS ONLUS)
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「あんな出来事の後もイルカが生きているのを目にして、みんな大喜びでした」とパーチェ氏。

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