【動画】深海魚のヌタウナギ、驚異の7つの異能力

自分の体を結んで攻撃&防御、酸素がなくても動く心臓ほか

2017.03.17
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自分の体を結ぶ

 ヌタウナギは、頭蓋はあるが脊柱を持たない唯一の動物だ。体内には、軟骨性の脊索(せきさく)がある。多くの脊椎動物では発生の過程で失われる棒状の器官だが、これがヌタウナギの高い柔軟性を生み出している。(参考記事:「謎の古代生物タリーモンスターの正体がついに判明」

 例えば捕食者に噛み付かれれば、ヌタウナギは自分の体で結び目を作り、その位置をずらしてゆくことで敵から逃れられる。

 同様に、「大きくておいしそうな死骸」から肉を切り取ろうとするときも、ヌタウナギは自分の体の結び目を支点に使うとファッジ氏は言う。また、ヌタウナギが自分で出した粘液にからまってしまうことがまれにあるが、この場合も結び目が脱出に役立つそうだ(ヌタウナギは、自分の鼻孔に粘液が詰まるとくしゃみすることもある)。

クモの糸に匹敵する強さ

 ヌタウナギの粘液に含まれる繊維は、強度も軽さもクモの糸にほぼ匹敵する。クモの糸で服をつくるための研究は何年も前から進められている。

ヌタウナギの繊維をつくる細胞の遺伝子のサイズはクモのそれより小さい。そのため、理論的には、これらの遺伝子を細菌に移植し、ヌタウナギの繊維を大量生産することもできるはずだ。そうすれば、今はナイロンが使われているストッキングやトレーニングパンツの素材に使える。ナイロンは元をたどれば石油から作られているため、ヌタウナギの繊維で代用できれば地球にも優しい。(参考記事:「クモの糸を紡ぐ遺伝子組み換えカイコ」「ヌタウナギの粘液が環境志向の繊維に」

酸欠の死骸の中に居住可能

「何かの死骸が海底に沈んでくると、真っ先にやってくるのはたいていヌタウナギです」とファッジ氏。「ヌタウナギと他の動物をはっきり分けているのが、その際の行動です」

 というのも、ヌルヌルとしたこの生物は全身まるごと死骸の中に入り込んでしまうからだ。もし食べ過ぎれば出られなくなり、ハチミツのびんに頭を突っ込んだ「クマのプーさん」のようになってしまう。したがって、食べた物を消化するまで死骸の中で生活せざるを得ないのではないか、とファッジ氏は考えている。

酸素がなくても心臓が動く

 腐敗していく死骸は「酸素を必要とする動物に適した場所ではありません」とファッジ氏。そんな場所でも生きられるからこそ、ヌタウナギは深海という極めて過酷な条件下でも生きていけるようだ。例えば、3つある心臓は酸素がなくても何時間も働き続ける。カナダ、ゲルフ大学の統合生物学者であるトッド・ギリス氏の研究によれば、その間は酸素の代わりに体内の脂肪分を使っている可能性があるという。(参考記事:「心拍数1200から重さ180kgまで、動物の驚異の心臓」

 謎を秘めたヌタウナギとその能力をめぐっては、未解明の点がまだまだ多い。それが、ファッジ氏が研究人生をヌタウナギにささげてきた理由だ。

「元々は、イカの研究をする計画だったんです」とファッジ氏。「ですがこれまで、私の関心リストの1位からヌタウナギが外れたことはありません」

文=Christine Dell'Amore/訳=高野夏美

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