発見:三葉虫の極上化石、内臓も脚も

4億7000万年前の30センチ個体、トゲトゲの脚は謎の足跡化石と一致

2017.02.09
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三葉虫の1種、メギスタスピス・ハモンディの化石。モロッコのフェゾウアタ累層から見つかった。(PHOTOGRAPH COURTESY MOROCCAN ANTI-ATLAS)
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 今から5億年近く前のある三葉虫の化石に、きわめて珍しい内臓や脚などが残っていることを研究者が発見、学術誌「Scientific Reports」に発表した。知られざる三葉虫の生態について、新たな手がかりを与えてくれそうだ。

 三葉虫は、太古の地球の海で数億年にわたって繁栄した節足動物。その仲間はこれまでに2万種以上が同定されているが、詳しい生態はあまりわかっていない。なぜなら、三葉虫が死んで甲羅のような硬い殻が化石になる頃には、体の下側にある脚などの軟らかい組織は跡形もなくなっているためだ。(参考記事:「【動画】奇虫!サンヨウベニボタルの驚くべき生態」

 驚きの発見をもたらしたのは、4億7800万年前の三葉虫、メギスタスピス・ハモンディ(学名Megistaspis hammondi)の化石。研究者のディエゴ・ガルシア=ベリード氏とフアン・カルロス・グティエレス=マルコ氏らのチームは、個人の収集家から寄贈されたモロッコ産の化石3個を詳しく調べた。

 3個の化石はいずれも全長30センチほどで、モロッコのフェゾウアタ累層から見つかったもの。極めて良好な状態にあり、脚(付属肢)や消化器官などが残されていた。彼らは太古の海で、堆積物の表層を忙しく動き回り、海底の泥を吸い込んで、隠れた生物や養分を摂取していたと推測される。

 さらに、この三葉虫の消化器官からは中腸腺が見つかった。中腸腺は食べたものの分解と消化を助ける酵素を分泌する器官で、現生の節足動物では一般に、捕食者に備わっている。一方で、この三葉虫には素嚢(そのう)もあった。素嚢は食物を一時的に貯蔵する袋状の器官で、通常は堆積物を食べる動物に見られる。

 研究チームはこうした発見から、メギスタスピスは普段は堆積物を食べて生きているが、餌になりそうな生き物を偶然見つけた場合には、肉食をすることもあったと考えている。(参考記事:「アノマロカリス、実は軟弱者だった?」

「現生の節足動物が死んだカニを見つけたら、気味悪がったり無視したりはせずに、食べるでしょう。生きていくにはエネルギーが必要ですから」と、オーストラリア・アデレード大学のガルシア=ベリード氏は言う。「現生の節足動物と同じように、三葉虫は幅広い能力を備えていました。生き延びるには、周囲にあるものを最大限に活用しなければならなかったのです」(参考記事:「三葉虫に見つかった謎の斑点」

奇妙な筋は三葉虫の足跡か

 メギスタスピスの化石からは、この時代の化石に広く見られる奇妙な「筋」の謎を解くヒントも見つかった。

 三葉虫の化石を観察していた研究者たちは、その脚に短いトゲのようなものがあるのに気づいた。

「この脚が残したような痕跡を、以前にどこかで見た気がしました」とガルシア=ベリード氏は言う。「その思いつきを口にしたところ、生痕化石の専門家で同僚のフアン・カルロスが『引っかき傷のような生痕化石「クルジアナ・ルゴサ」は、この三葉虫の脚のトゲが作ったのかもしれないぞ』と言ったんです」

 生痕化石とは、生物そのものではなく、生物の活動の痕跡が化石になったもので、そのうちクルジアナは主に三葉虫の通った痕跡と考えられている。奇妙な筋のような痕跡は、かつてのゴンドワナ超大陸にあった岩から大量に見つかっている。ゴンドワナは約2億年前、後のアフリカ、南米、オーストラリア、インド、南極大陸に分裂した。

研究チームが精査した三葉虫メギスタスピス・ハモンディの化石は驚くほど保存状態が良好で、内臓や脚(付属肢)などが見事に残っていた。そのおかげで研究チームは、三葉虫の脚と同時代の「足跡」化石の形状が一致することを確認できた。(PHOTOGRAPH COURTESY MOROCCAN ANTI-ATLAS)
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「クルジアナは古生代の幅広い年代で見つかっていますが、なかでもクルジアナ・ルゴサと呼ばれる種類の化石は、年代と地域がメギスタスピスと重なっているのです」。その年代は4億8800年前から4億4300万年前、古生代のオルドビス紀にあたると、ガルシア=ベリード氏は説明する。「そして思った通り、メギスタスピス・ハモンディの脚のトゲは、引っかいた痕のようなルゴサの形状と実によく一致しています」

 メギスタスピスのような三葉虫がクルジアナなどの生痕化石を作ったという証拠は、これまではごくあやふやなものしか見つかっていなかった。そう語るのは、英国のロンドン自然史博物館の研究者で三葉虫を専門とするグレッグ・エッジコム氏だ。証拠の発見が困難なのは、一つには生痕化石と三葉虫がこれまで、年代のかけ離れた堆積層から見つかっていたためだ。

「この分野の権威のなかにも、クルジアナのような生痕化石がほかの節足動物ではなく、本当に三葉虫によって作られたものかどうかを疑問視する人がいるほどです。しかし、世界のさまざまな場所からオルドビス紀の堆積物に残る痕跡を集めた今回の検討では、それらの痕跡は(メギスタスピスの)腹部の構造と見事に一致しています」

 ガルシア=ベリード氏は現在、オーストラリアにあるエミュー湾の5億4000万年前の堆積物から初期の生命を探す調査を継続中で、ナショナル ジオグラフィックもこの研究を支援している。今回のメギスタスピスに関する発見をきっかけに、三葉虫の軟組織や、脚の形状と生痕化石の一致についての研究が進むのではないかと、ガルシア=ベリード氏は述べている。

「世界にはたくさんの情報があふれていますが、まず心をオープンにして、真実を探し求めることが大切です。答えはすぐそこにあるのです。三葉虫の形や大きさだけでなく、その内部構造や行動、複雑な生活について理解するのは、掘り下げる価値のあるテーマだと思います」(参考記事:「勃起したザトウムシの化石、ペニスで新しい科に?」

文=Michelle Z. Donahue/訳=北村京子

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