革命が混乱助長、出口なき「ウクライナ違法琥珀」

合法化は焼け石に水、ウクライナ違法琥珀採掘レポート(後編)

2017.02.09
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立ち入り捜査にやってきた警察の特殊部隊と対峙する採掘者たち。2016年5月30日に撮影。(PHOTOGRAPH BY BRENDAN HOFFMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 地下に眠る数億ドルもの琥珀をめぐり、ギャングが抗争を繰り広げ、腐敗した政府の役人たちが縄張りと主導権を巡って争うウクライナの町ドブロビツァ。いまは違法採掘に手を染める元警察官ブラド氏とスタス氏の案内で、私たちはかつて大量の琥珀が見つかった採掘穴のひとつを訪れた。(参考記事:ウクライナ違法琥珀採掘レポート前編

「もめ事は日常茶飯事だ」と、スタス氏は言った。

 しかも、握りこぶしやシャベルだけでは済まない。ある時、2人の採掘者がこの採掘場で喧嘩を始め、それを止めるために「誰かが人の家の庭に手りゅう弾を投げ込んだんだ。警告のつもりでね」(参考記事:「暴力が支配するコンゴの鉱山」

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違法琥珀採掘に使われていたとして、ドブロビツァで警察に押収された自家製のポンプ。(PHOTOGRAPH BY BRENDAN HOFFMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「まるで1920年代のシカゴのようです。小さな町ですが、ここのマフィアはシカゴよりもひどい」。ドブロビツァの警察署長ステパン・ツァリュク氏(28歳)は言う。元特殊部隊の兵士で、片方の腕には刃物で切り付けられた傷跡が残っている。ロシアとの国境で起こった紛争で、素手で戦った時に負ったものだという。(参考記事:「混迷するメキシコ麻薬戦争の今」

 最近、2万700ドル相当の琥珀が入った12キロもの袋を運んでいた容疑で男が逮捕された。警官2人に襲い掛かって逃げようとしたが、駆け付けた他の警官によって取り押さえられた。他にも、90キロの袋を運んでいた容疑で逮捕された者もいる。

 数年前に琥珀ブームが沸き起こって以来、近くの救急病院で働く医師は、手りゅう弾や銃弾、ナイフで負傷した琥珀採掘者を何人も処置してきたという。誰でも、自動小銃を750ドルで、手りゅう弾は150ドルで手に入れることができるのだと、医師はこっそりと教えてくれた。

ホースで引いた水を穴へ注入し、砂質土を柔らかくして琥珀を掘り出す。(PHOTOGRAPH BY BRENDAN HOFFMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 危険なのは、人間同士の諍いだけではない。この医師によると、過去5~6年間で、穴が崩れて負傷した人々は自分が処置しただけでも500~600人はいるという。「地下5メートルの深さまで掘るんですから、土や砂が崩れ落ちて、中にいる人を生き埋めにしてしまうこともあります。完全に埋まってしまった人も3~4人は知っています。2トンもの砂が上から落ちてくるんですよ」

「それに、酒の量も半端じゃない。飲酒運転で事故を起こす奴がたくさんいます。飲酒採掘する連中もいますがね。とにかく、ここは無法地帯だ。みんな頭がどうかしてしまってるんですよ」

 政府が管理する採掘事業も、少なからず存在する。しかし、合法的に事業許可証を取るのには何年もかかり、その過程は汚職にまみれている。事業をしっかり監督する者もいない。「役人連中も森林を破壊しています。でも、食べていくためにやっているんです。それはわかります。子どもたちに食べ物を与えてやりたいという思いからです」と、警察署長のツァリュク氏は言う。(参考記事:「少女たちが見つめる希望の光」

ドブロビツァでは最近、琥珀採掘に関連した犯罪が多発している。(PHOTOGRAPH BY BRENDAN HOFFMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 琥珀採掘事業は違法、合法あわせて年間5億ドル規模と推定されている。ツァリュク氏は、合法的な事業を拡大するべきだと考えているが、犯罪と汚職の取り締まりすらままならないこの国では容易なことではない。政府の役人や警察は、採掘をどのように運営するかで意見が対立し、採掘者の多くも合法化に反対している。(参考記事:「環境犯罪の巨額収益、年2千億ドル?」

「合法化されたら、1000ドルで売れるものが500ドルぐらいに下げられてしまう。そして、その分増えた利益は政府が全部持って行ってしまうだろうよ」。車に戻りながら、スタス氏は言った。

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