暴力と破壊が渦巻く「ウクライナ違法琥珀」

琥珀ラッシュの無法地帯を直撃、ウクライナ違法琥珀採掘レポート(前編)

2017.02.08
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ウクライナのドブロビツァ。政府は琥珀の採掘を制限しているが、現場には採掘された後を示す深い傷跡が残されている。(PHOTOGRAPH BY BRENDAN HOFFMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 ブラド氏の黒いランドクルーザーが、砂利の音を立てながらドブロビツァの町に建つ色あせた教会の前をゆっくりと通り過ぎる。教会の中から、300年前に建造された大聖堂を修復する電動のこぎりの音が響いてきた。その費用は、違法な琥珀取引で賄われているとの噂がある。ブラド氏のパートナーであるスタス氏のBMWは、そこから数ブロック先で停車した。

 元警察官だという2人は、ブラド氏の車のトランクを開けて、中から猟銃を取り出した。銃弾もいくつかつかむと、銃を私たちのトラックの荷台に入れた。「仕事に行く時はいつも武装する」。彼らは、違法な琥珀採掘者たちだ。私は彼らの案内で、これから琥珀採掘の現場へ向かう。(参考記事:「暴力が支配するコンゴの鉱山」

 彼らが武装しなければならないのも納得できる。ウクライナの町ドブロビツァを取り巻く広大な森林は、今や開拓時代の米国西部のような無法地帯と化している。やせたマツとカバノキが生い茂る土地の下には、数億ドルもの価値の琥珀が眠っているのだ。黄金色の半貴石に引き寄せられてやってくるのは採掘者だけではない。過去幾度となく繰り返されたゴールドラッシュのときのように、犯罪件数も増加した。富をもたらす採掘穴をめぐってギャングが抗争を繰り広げ、腐敗した政府の役人たちが縄張りと主導権を巡って争っている。(参考記事:「巨大な穴にのみ込まれる町、ペルーの鉱山」

貧しい村人たちが生活のために

11月、ウクライナ西部で琥珀を採掘する男たち。水を使って土を柔らかくしてから掘り出す。(PHOTOGRAPH BY BRENDAN HOFFMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 琥珀は樹脂が化石化したもので、ハリウッド映画『ジュラシック・パーク』のおかげで世界的に有名になった。ウクライナ北西部で沸き起こった琥珀ラッシュの背景にあるのは、数万という貧しい村人たちの存在だ。生活のために、彼らは高圧ホースを使って地面に水を注入し、緩んだ土を掘り返し、琥珀を違法に採掘する。(参考記事:「世界初、恐竜のしっぽが琥珀の中に見つかる」

 町を出る途中、私たちはあめ色に輝く琥珀をちりばめた宗教画や装飾品を売る小さなショールームの前を通った。近くには、家具や建築資材を売る店が立ち並んでいる。琥珀を売って一儲けした人々が、狭い自宅を修理したり、新築するために押し寄せてくる。

 町を出ると車はスピードを上げ、広大な農地や古い村々を走り抜けて行った。琥珀マネーの流入で、ほとんどの家が改修されたり、近代的なスタイルに建て直されていた。間もなく、私たちは薄暗い森の中へ入った。そこには、青いマツや白いカバノキに隠れるようにして、琥珀を取り出すために掘られた無数の浅い穴が口を開けている。

 政府の手入れがあったばかりで森に人けはないが、採掘の爪痕はそこかしこに残されていた。片側には、木がすべて切り倒されている広い空き地があった。穴だらけの地面は、第一次世界大戦の塹壕や、月面のクレーターを思わせる。道路の反対側の森でも、穴を掘るために根元から抜かれた木が斜めに横たわり、竜巻が通った後のような光景が広がる。(参考記事:「第一次世界大戦 知られざる遺産」

RILEY D. CHAMPINE, NG STAFF SOURCE: ATLAS: “GEOLOGY AND MINERALS OF UKRAINE” Kiev, 2001
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