【動画】衝撃、チンパンジーが元ボスを殺し共食い

地位を追われたボスは、なぜ群れに戻ったのか

2017.02.01
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2013年6月15日の昼前に撮影されたフォウドウコの死体。(PHOTOGRAPH COURTESY JILL PRUETZ)
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 すべての仲間がここまで悪意をむき出しにしていたわけではない。ママドウはかつての盟友を眠りから覚まそうとしているかのように、体を引きずり回したり、顔のすぐそばで叫んでいた。デビッドは、死体にほとんど触れようとしなかった。しかし、プルエッツ氏にとって意外だったのは、フォウドウコの体を誰よりも夢中で食い荒らしていた雌が、ママドウとデビッドの母親であるファラファだったことだ。「ファラファがフォウドウコをよく思っていなかったことは明らかです。でもこの行動は、どう説明したらいいのかわかりません」

 フォウドウコは、交尾相手をめぐる争いの末に殺されたのではないかと研究チームは考えている。フォウドウコが、発情した雌に近づこうとしたのだろうか。フォンゴリの群れは、雄が雌の数を上回っているため、競争が激しいのだ。

 2014年に、プルエッツ氏ら30人の霊長類学者が共同で発表した報告書によると、チンパンジーの死闘の多くは、交尾相手や資源をめぐる競争が原因であるという。

「群れの中での殺し合いは、ほとんどが交尾相手をめぐって雄同士が争った結果、起こるものです」と、ウィルソン氏は言う。「このような小競り合いは頻繁に起きていますが、それが行き過ぎると殺しに発展してしまうのです」(参考記事:「衝撃、ヒョウの共食いを撮影、南アフリカ」

人間と同じ?

 チンパンジーの共食いは、1970年代の初め頃から報告されている。なかには、雌が雄の性器部分を全て切り取って食べてしまうなど、さらに衝撃的なケースもある。

 こうした殺害において、彼らの近縁である人間と比較するには、まだ議論の余地がある。ウィルソン氏は、チンパンジーと人間との間に明確な線引きをしているが、プルエッツ氏は、「人間はとても複雑ですから、何とも言えません」と言う。むしろ、今回の事件では、チンパンジーと人間の違いを強く感じたという。

 チンパンジーたちがフォウドウコの死体を置き去りにするのを待って、プルエッツ氏らはセネガル当局の立ち合いのもと、死体を土に埋めた。

 残されたチンパンジーたちは互いを慰め合っているようだったが、同時に何が起こったのかを理解するのに苦しんでいるようにも思われた。墓の方からは、おびえたような鳴き声が夜通し響いてきた。

「彼らは、死体にひどくおびえていました。死という概念に欠け、それがもたらす終わりというものを理解できずにいたのです」と、プルエッツ氏は語る。

 この悲惨な出来事を数年かけて分析したプルエッツ氏は、ようやく発表することができて、肩の荷が下りたという。しかし、若い雄のチンパンジーたちの反乱は今なお続いている。これからも、フォウドウコのように追放されたり、犠牲となるチンパンジーが出てくることだろう。

「やはりママドウも追い出されてしまいました。デビッドは今でもボスですが、何度か襲われています。時々ふと、ママドウがまだ群れの外で元気にしているのではないかと思うことがあります。もしそうであれば、彼はフォウドウコよりもずっと利口なのかもしれません」。(参考記事:「チンパンジーを見つめた50年」

文=Michael Greshko/訳=ルーバー荒井ハンナ

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