“処女懐胎”のトラフザメ、過去に通常の産卵も

両性生殖からオスのいらない単為生殖に転換、サメでは初めて確認

2017.01.20
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メスのトラフザメ「レオニー」。両性生殖から単為生殖に転換したことが確認された最初のサメとなった。(説明は英語です)(PHOTOGRAPH COURTESY TOURISM AND EVENTS QUEENSLAND)

 女性にとっても男性にとっても、ぎょっとするようなニュースだろう。

 オーストラリアの水族館で、3年前からオスと離れて飼育されているメスのトラフザメ(Stegostoma fasciatum)の「レオニー」が、2015年に産んだ卵から3匹の子サメが孵化し話題になった。このレオニーが、1月16日付けの科学誌「Scientific Reports」に掲載された論文によると、通常の両性生殖からオスのいらない単為生殖に転換していたことが確認された。(参考記事:「トラフザメが”処女懐胎”、3匹の子サメが誕生」

 トラフザメの単為生殖自体が確認されたのは初めてではない。だが、両性生殖から単為生殖への転換が科学者に確認されたのは初めてだ。(参考記事:「ホテルのサメが4年連続”処女懐胎”」

 実際のところ、リーフHQグレート・バリア・リーフ水族館で飼育されているレオニーは、数年前に同水族館のオスと交尾して卵を産んでいた。しかし、 2012年に別の水槽に移されて、オスとの接触なしに暮らすようになってからも、無精卵を産み続けるニワトリのように毎年のように卵を産んでいたという。

 サメで両性生殖から単為生殖への転換が確認されたのはこれが初だが、過去にはマダラトビエイ(Aetobatus narinari)とコロンビアレインボーボア(Epicrates maurus)で観察されている。

 また、両性生殖をしたことのない個体による単為生殖は、多くの生きもので観察されている。米国ケンタッキー州のルイビル動物園でアミメニシキヘビ(Python reticulatus)が“処女懐胎”したときには、科学者たちは非常に驚き、過去に交尾をした際に体内に蓄えておいた精子で受精したのではないかと疑ったほどだった。(参考記事:「アミメニシキヘビの単為生殖を初確認」

 だが、このヘビは産まれてから一度もオスと接触したことがなかった。対して、サメのレオニーはオスと接触したことはあった。そのため、2015年にレオニーの子が孵化したとき、水族館の科学者たちは、体内に蓄えていた精子で受精したのではないかとも考えた。しかしながら、詳細な検査により、レオニーの子どもたちには遺伝的な多様性が欠けており、オスの関与なく誕生した可能性が高いことが明らかになった。(参考記事:「共食いも胎盤も! サメは「繁殖様式のデパート」」

生まれた子どもは繁殖できる?

 通常は両性生殖するサメやヘビなどが、ときに単為生殖する理由はまだ明らかになっていない。2010年に学術誌「Journal of Heredity」に掲載されたサメの単為生殖に関する論文の共著者であるケビン・フェルドハイム氏は、繁殖相手がいなくなると単為生殖に切り替わるのかもしれないという。(参考記事:「オスがいても“単為生殖”する野生ヘビ」

リーフHQグレート・バリア・リーフ水族館で飼育されているレオニーの子のうちの2匹「クレオ」と「CC」。遺伝子検査により、彼らがオスの関与なしに産まれたことが確認された。(PHOTOGRAPH COURTESY TOURISM AND EVENTS QUEENSLAND)
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「メスがオスから引き離されたことで、こうなったのだと思います」

 単為生殖によって生まれた子に繁殖力があるかどうかは「私たちがいちばん知りたいことのひとつ」とフェルドハイム氏。「実は、単為生殖によって生まれたサメが単為生殖することを確認した研究がひとつあります」

 遺伝的多様性の少ない子孫を持つことは理想的ではないとはいえ、単為生殖はメスがオスのいない環境で子孫を残すための最後の手段なのかもしれない、と氏は考えている。(参考記事:「メスしかいないサラマンダー、驚きの利点判明」

「メスだけの隔離された集団や、オスがほとんどいない場所で暮らすメスにとって、単為生殖は自分の遺伝子を後世に残すための手段です」

 通常は両性生殖をするが、ときに単為生殖をすることがある生物がどのくらい存在しているのかは不明だが、フェルドハイム氏によれば哺乳類では確認されていないということなので、ご安心を。

文=Becky Little/訳=三枝小夜子

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