まるで地球、衛星タイタンの驚くべき写真

探査機着陸の偉業から12年、海も山も川もある土星の衛星の素顔

2017.01.17
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 米アリゾナ大学のラルフ・ローレンツ氏は、「タイタンに関するそれまでの知識は間接的に調べられたことばかりでしたが、ホイヘンスはタイタンの環境を直接明らかにし、クローズアップで見せてくれたのです」と言う。

 ホイヘンスは私たちに、タイタンに山々や急流の浸食によってできた峡谷、河床、窒素を主成分とする大気に風があることを教えてくれた。地表での測定の結果は、ホイヘンスが着陸した砂地が乾燥した砂漠ではなく、なんらかの液体によって湿っていることを示していた。

 ホイヘンスは大気の測定も行い、科学者たちは、タイタンの昔の大気の組成を再現し(おそらくアンモニアとメタンからできていた)、生命が進化して酸素が豊富になる前の地球と同じ、窒素を主成分とする大気の中で有機分子がどのように振る舞うかを調べられるようになった。

「窒素を主成分とする大気を持つことが分かっている天体は、地球のほかにはタイタンだけです」とホルスト氏。「タイタンの大気中では、酸素ができる前の初期の地球で見られた化学反応の多くが起こっていると考えられます」

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オレンジ色の空
NASAの土星探査機カッシーニが、土星とその環の手前を横切るタイタンの姿を捉えたカラー写真。タイタンは土星の最大の衛星だ。(PHOTOGRAPH BY NASA)

タイタンから地球を知る

 ホイヘンスによるタイタンの探査は、人類が月以外の衛星に探査機を着陸させた最初の(そして今のところ最後の)ミッションだった。(参考記事:「「彗星ヒッチハイカー」と「氷衛星の中心への旅」」

 NASAは以前、将来の惑星探査ミッション候補の筆頭に「タイタン表層海探査(Titan Mare Explorer)」を挙げていた。このミッションは、タイタンの北部にある多くの海の1つであるリゲイア海に浮かぶ探査機を送り込むというものだった。液体の炭化水素からなるタイタンの表層海には、地球の生命とはまったく異なる化学物質からなる生命が生息している可能性がある。(参考記事:「タイタンの海に新探査計画」

「この探査により生命の多様性を検証できるはずでした。地球上の生命とは異なる液体を利用する生命を見つけることもできたかもしれません」とホルスト氏。(参考記事:「生命は地球の外にも存在するのか?」

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大小の湖
カッシーニが撮影したタイタンの北部地域のモザイク画像に着色したもの。この地域には炭化水素の湖や海が無数にある。(IMAGE BY NASA, JPL-CALTECH, ASI, USGS)

 人類はまもなく土星系に送り込んでいた探査機を失う。カッシーニは今年中にミッションを終え、土星に突入することになっている。しかし、ホイヘンスやカッシーニなどの歴代の探査機が収集したデータは、その本体が失われた後も太陽系に関する新しい手がかりをもたらし、科学者が将来のミッションを計画するのに役立つだろう。(参考記事:「土星探査機カッシーニ、最終ミッションを開始」

 タイタンは、地球とはまったく異質であると同時に、どこか親しみも感じられる天体だった。季節ごとに降る雨は平野を黒く染め、有機分子が豊富で、冬には極地の周囲をまわる「極渦」のような風が吹いていた(仕上げはシアン化水素の雲だ)。

 ローレンツ氏は、「タイタンの魅力は、おなじみのものとエキゾチックなものが混在している点にあります」と言う。「超低温や氷や有機物や液体メタンが、地球でも見られるような雨や川や砂丘や海を作っているのです」

 簡単に言えば、タイタンは地球以外の土地を探検するという興奮を与えてくれるだけでなく、私たちの故郷である地球についても知識を与えてくれる点で、科学者にとって非常に魅力的な天体なのだ。(参考記事:「最新研究で見えてきた「生命の星」地球のレシピ」

 ホルスト氏は言う。「タイタンは活動的な天体で、地球上で見られる過程によく似たものが多く見られるので、惑星の成り立ちに関する基本的な理解を検証するのにうってつけなのです」

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文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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