ロシアの自然保護区100年、厳格さの背景

めったに見られない美しい自然風景17点

2017.01.17
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北極圏に位置するプトランスキー自然保護区のプトラナ台地。春にできた氷の割れ目が静脈のように広がる。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV)
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 波乱に満ちたロシアの歴史の中に、あまり知られていない1つの遺産がある。自然を守りたいと願う人々の数十年にわたる努力によって実現した、自然保護区の制度だ。なかにはあまりに辺境にあったり、保護が厳しすぎたりして、ロシア人でさえほとんど足を踏み入れない場所もある。

 2017年は、その創設から100周年の節目に当たる。皇帝の支配を終わらせてソビエト連邦を誕生させた十月革命と同年の出来事だった。これを記念し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2017年を「環境と自然保護区の年」と公式に宣言している。

シベリアのプトラナ台地にあるカンダ滝がしぶきを上げて滝つぼに落ちる。このプトランスキー自然保護区は1988年に設立された。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV)
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 1917年1月(ソ連は当時、別の暦を採用していたため、現行暦では1916年12月)、皇帝ニコライ2世は、シベリアのバイカル湖に近い土地をロシア帝国初の自然保護区(ザポベドニク)、つまり厳格に守られる区域として公式に指定した。米国が国立公園局を設立したのもちょうどその時期だが、米国の国立公園制度は「人々の利益と楽しみのために」管理することを使命としていた。保養を求める人々が利用できる「楽しみの場」と見なされていたのだ。(参考記事:「グリーンスライムがバイカル湖で大発生、ロシア」

岩の間から顔をのぞかせるクロテン。ロシア、カムチャツカで。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV/ MINDEN PICTURES)
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 一方、ロシアの考えは違った。グリゴリー・コジェブニコフら、20世紀初頭のロシアの自然保護論者たちは、ロシアの自然の富を、他ならぬロシア人の手から守るべきと主張していたのだ。「何かを取り除いたり、加えたり、改善する必要はない」と、コジェブニコフは記している。「自然は手つかずで残されねばならない。我々はその結果を観察することができる」

 最初の自然保護区は、バイカル湖に近いバルグジン地域のクロテンの保護を目的としていた。黒っぽいその毛皮は毛の密度が高く、「柔らかい金」とも呼ばれる高級品で、イワン雷帝からエカテリーナ2世まで、皇帝たちがその将来を心配したほどだった。狩猟好きのニコライ2世も1917年には行動を起こす必要に迫られた。高価な毛皮が取れるこの肉食哺乳類が、絶滅の危機にさらされていたのだ。(参考記事:「シベリアで氷河期の絶滅ライオン見つかる」

 こうして最初の自然保護区が誕生したものの、同じ時期、皇帝自身も危機のただ中にあった。同年3月には退位を余儀なくされ、1918年、ボルシェビキの革命勢力によって、ロマノフ家の人々と共に処刑された。

ロシア最北に広がる大北極自然保護区は1993年の設立。面積は4万平方キロを上回り、世界でも最大級の規模だ。(PHOTOGRAPH BY SERGEY GORSHKOV)
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過去100年の負の遺産

 その後、70年にわたるソ連の歴史で目立つのは、戦争と開発、そして冷戦だ。第二次大戦では、1941年のドイツによる侵攻をきっかけにロシア人は数百万人の犠牲を出した。後には急速な産業発展と、米国との軍拡競争が始まった。

 現在のロシアの天然資源・環境大臣であるセルゲイ・ドンスコイ氏は、ソ連崩壊から25年以上たったものの、ロシアの風景はいまだ「高レベル汚染や自然が衰退した土地」によって損なわれ続けていると話す。(参考記事:「北極 資源開発の行方」

 これでも控え目な言い方だ。外国人がロシアの環境史について考えるとき、思いつくのは自然保護区よりも、過去100年間で起きた環境破壊だろう。ロシアが支配的な力を持っていたソ連で、かつてはウズベキスタンとカザフスタンにまたがる世界最大級の淡水供給源だったアラル海が灌漑で縮小し、ウクライナのチェルノブイリでは世界最悪の原発事故が発生した。(参考記事:「 アラル海からの警鐘」「事故から30年、チェルノブイリが動物の楽園に」

 それでも、バルグジンのクロテンは絶滅しなかった。そこをすみかとするバイカルアザラシ、ヒグマ、トナカイも同様だ。彼らを守ったのは、ニコライ2世が設立したバルグジンスキー自然保護区だった。今日、同様の自然保護区がバルグジン以外に102カ所ある。

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【フォトギャラリー】厳しくも美しいロシアの自然風景10点
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