米テーマパークがシャチショーの歴史に幕

4億人を集めた人気ショー、曲芸からエンリッチメントへ

2017.01.06
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米国の海洋テーマパークのシャチショーが幕を閉じる。写真は2014年3月のショー。(PHOTOGRAPH BY MIKE BLAKE, REUTERS)
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 1月8日、米国カリフォルニア州サンディエゴにある海洋テーマパーク「シーワールド」で、最後のシャチショーが行われる。何年にもわたる動物愛護団体の反対運動や、シャチの事故に端を発するドキュメンタリー映画『ブラックフィッシュ』の影響を受け、シーワールドは2016年3月、シャチショーの終了を発表していた。(参考記事:「シャチショー廃止へ、米国で過熱する飼育批判」

 フロリダ州とテキサス州のシーワールドも、2019年末までにシャチショーを終了する予定だ。ただし、シーワールド・サンディエゴの広報担当者デイブ・クーンツ氏は報道陣に対し、「今後は暫定的ですが、水中の風景を見られるプールで、教育を目的としたプレゼンテーションを行います。スタジアムにある演出用の動くスクリーンやセットは撤去し、シャチが暮らす自然の海を再現した背景を設置します」と説明している。

 カリフォルニア州は2016年、シャチの飼育下での繁殖を禁止した。シーワールドは何年も新しいシャチを入手していないが、ほんの数カ月前まで繁殖を行っていた。

 数十年前に始まったシーワールドのシャチショーは4億人以上の観客を集めてきた。しかし、今後は拍手喝采の曲芸から脱却し、「シャチの充実した暮らし、運動、健康」を重視した「自然で感動的な新しいかたちの触れ合い」へと移行することになる。現在いるシャチはこのまま飼育を継続する。

 シーワールドのCEOジョエル・マンビー氏はシャチショー終了を伝える声明の中で、「シャチに対する理解を深める役割を担うことができ、誇りに思っています。シャチに対する社会の認識は刻々と変化しています。シーワールドもそれに合わせて変化していくつもりです」と説明している。

 動物の権利擁護を訴える人々は、おおむねシャチショーの終了を歓迎しているが、動物の倫理的な扱いを求める人々の会(PETA)はシーワールドに対し、今すぐ「水槽の中身を海に帰す」よう要求している。(参考記事:「水族館から大海原へ イルカやシャチを野生に返す試みが始まった」

 シーワールドはこれに対し、飼育されているシャチは野生で生き抜くことができないため、海に帰すのは危険だと反論している。

【動画】シャチのとても賢い狩り

 世間がシーワールドのシャチショーに厳しい目を向けるようになったきっかけは、2010年2月、この施設にいたシャチが飼育トレーナーの命を奪った事件だ。この事件の後、元トレーナーたちが飼育下に置かれたシャチのストレス、狭い場所で暮らすことによるいじめ、厳しいスケジュール、自然とほど遠い生活環境について語り始めた。(参考記事:「映画『ブラックフィッシュ』の波紋」

 ここ数年、シーワールドの来場者、特にシャチショーの観客は落ち込み、抗議行動やミュージシャンによるボイコットが起きていた。

 強力な捕食者であるシャチは、長さ10センチにも達する歯を武器に、アシカやアザラシからクジラまで、さまざまな海洋哺乳類に襲いかかる。魚やイカ、海鳥もシャチの餌食になっている。シャチは本来、極域沿岸の冷水を好んで生息するが、赤道域でも見つかる。知能は高く、最大40頭の群れで狩りを行う。(参考記事:「獲物を追い詰めるシャチの群れ 」

文=Brian Clark Howard/訳=米井香織

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