【動画】カンガルーを殴る男、動画が話題に

猟犬にヘッドロックするカンガルーに飼い主が反撃、どうなる?

2016.12.09
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【動画】カンガルーにパンチを浴びせる男性
動物を尊重してください。危険なのでマネしないでください。(解説は英語です)

 オーストラリアで6月に撮影された動画が今週、インターネットで大きな注目を集めている。大きなオスのカンガルーと人間の男性が対決する劇的な場面を収めたものだ。

 この男性はグレイグ・トンキンスさん(34歳)と報じられており、友人たち数人と猟犬とともに、豪ニューサウスウェールズ州郊外でイノシシ狩りをしていたという。その最中、トンキンスさんは自分の猟犬が大型のカンガルーにヘッドロックをかけられているのを目にし、犬を助けようと駆け付けた。

 驚いたカンガルーは、犬を解放。だがトンキンスさんは、続けてこのカンガルーの顔面を殴った。メディアには、「カンガルーを脅かして遠ざけ、犬が逃げるチャンスを作りたかった」と話している。

「この男性はとても幸運でした。命を落とす可能性もあったからです」と話すのは、ナショナル ジオグラフィック協会が支援するエクスプローラーで、カンガルーを研究するマーコ・フェスタ・ビアンチェット氏だ。同氏はカナダ、ケベック州にあるシャーブルック大学の生物学者でもある。

 一般のイメージとは異なり、カンガルーは普通、ボクサーのように互いに殴り合うことはないとフェスタ・ビアンチェット氏は説明する。むしろ、丈夫な尾でバランスを取りながら、力強い後ろ脚でキックを繰り出すことが多い。(参考記事:「カンガルーの尾は第5の“脚”」

「今回のカンガルーが同様のキックを男性に食らわせていたら、彼はお腹を裂かれていたかもしれません」とフェスタ・ビアンチェット氏。

 カンガルーが時々使うもう1つの技は、相手の目を爪で引っかこうとするというもので、この攻撃を受けるとトンキンスさんは重傷を負うところだった。

【動画】カンガルー同士の格闘。

 このカンガルーは明らかに大型のオスだと、フェスタ・ビアンチェット氏は話す。動画から、立ち上がったときの高さは約180センチ、体重80キロ近くにもなると推定される。体格からしておそらく9~15歳であり、最も血気盛んな時期だと思われる。

 野生では、オスのカンガルーは交配相手のメスをめぐって1対1で戦うことがよくあり、一方が死に至ることさえある。だが、普通はどちらかが負けを認める。その場合、グルーミングをしたり、せき込むような音を出したりする従属のサインがしばしば見られる。

「パンチは間違いなく痛かったでしょう」とフェスタ・ビアンチェット氏。「カンガルーが『おっと、今のは何だ?』と言わんばかりなのがわかります。カンガルーは普通しない行為ですし、カンガルー同士で通じるサインも人間は出しませんから。面白い映像ではありますが、本当に危ない状況でした」(参考記事:「カンガルーは左利き、有袋類の利き手研究」

 報道によれば、カンガルーは茂みの中に逃げ込み、目につく傷はなかったとトンキンスさんは語ったという。

男性の行動の是非は?

 トンキンスさんのパンチに対して、インターネット上には批判的なコメントが寄せられた。中には、「カンガルーが犬を放したとき、なぜすぐに逃げなかったのか」という疑問の声もある。だがフェスタ・ビアンチェット氏は、その場にいなかった人々の分析には否定的だ。

「男性は明らかに興奮状態にありましたし、難しい一瞬の判断を迫られていました」とフェスタ・ビアンチェット氏。「カンガルーに危機感を抱いたのは確かで、かつ自分の犬を守ろうとしていたのです」

「それでも、私なら殴る以外の選択肢を勧めますが」とフェスタ・ビアンチェット氏は付け加えた。

 これまでのところ、ナショナル ジオグラフィックはトンキンスさんへの取材はできていない。今回、なぜカンガルーと犬が争いになったのか正確にはわからないものの、フェスタ・ビアンチェット氏によれば、ディンゴがカンガルーを捕食することはよくあり、カンガルーもディンゴとの戦いに慣れているという。(参考記事:「動物大図鑑 ディンゴ」

「カンガルーはディンゴを地面に組み伏せて自分の身を守ることが多く、この動画でもまさにその行動を見せています」とフェスタ・ビアンチェット氏。

勤務先の動物園もコメント

 実は、トンキンスさんは野生動物に関わる仕事をしており、タロンガ・ウエスタン・プレーンズ動物園の飼育員も務めていることが、同園の声明で明らかにされた。タロンガ動物園は、今回の件について調査中とのことだ。

 声明によれば、トンキンスさんの雇用が危うくなることはないという。6年の勤続の間、トンキンスさんは「動物のケアと福祉に対し、当園が目指す模範的なアプローチを常に実践してきました」と評価されている。「しかしながら、最高水準の動物福祉とケアは当園が大事にしている価値観であり、野生動物との関わり合いにおいても、スタッフには常に守ってほしいと期待する点の1つです」

「当園は動物に攻撃を加えることには強く反対しており、狩猟に犬を用いる慣行も支持していません。狩猟対象と犬の双方の福祉を悪化させる可能性があるためです」と、動物園側は記している。

 トンキンスさんの友人たちは、「あの状況で自分自身、犬、仲間たちを守るために必要な行動を取った」として、彼の行動を支持する発言をしている。彼らが連れ立って出掛けたのは、病気の友人がイノシシ狩りに出るのを助けるためだったという。その後、その友人は亡くなった。

 オーストラリアでは外来種のイノシシが生態系に悪影響を与えており、イノシシ狩りが広く行われている。狩りに犬が使われることもある。犬にイノシシを捕らえさせてからナイフで殺すと、銃を使わずに済むためだ。(参考記事:「米で急増するイノシシ、感染症を拡大か」

文=Brian Clark Howard/訳=高野夏美

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