オピオイド依存に悩む米国、貝の毒で新薬開発へ

鎮痛剤乱用で大統領が非常事態宣言、1000万ドル近い助成金

2017.12.08
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進化の過程でできた毒という防御機能

 生物医科学者でナショナル ジオグラフィック協会付きエクスプローラーのゾルタン・タカシュ氏は、薬を見つけるには自然界を探すのが一番だと語る。イモガイの毒も含め、生物の防御機能は、特定の機能に的を絞って働くよう、数億年もの進化の過程で磨きをかけられてきた。(参考記事:「自らの猛毒耐えるカエルの謎を解明、応用に期待も」

「生物が持つ毒は、自然界が特別に選別した分子です」と、タカシュ氏は説明する。「種は違っても、全体的に見て生物毒の機能と構造はどれもよく似ています。自然が選択したひとつの分子が、ヘビ、サソリ、そしてイモガイの持つ毒の中で同じ役割を果たしているのです」

 タカシュ氏も、この研究を期待を持って見守っている。天然の毒素から医薬品を開発するには、平均で少なくとも10年はかかるが、助成金は4年分しかない。研究チームは、効果的かつ選択的に痛みに的を絞った新薬の開発に取り組まなければならない。それによって、薬の効き目を高め、副作用を抑えることができる。また、投与しやすいという点も重要だ。イモガイの毒から作られた別の薬は、脊椎に直接注射しなければ効果が得られない。

「研究結果をとても楽しみにしています。研究費をかけただけの価値はきっとあるでしょう」

米国ではオピオイド過剰摂取で1日当たり91人が死亡

 長年、オピオイドは米国で慢性的な痛みを抱える患者の救いとなってきた。オピオイド系鎮痛剤は、脳のドーパミンのレベルを上昇させ、患者に心地よい高揚を感じさせることで痛みを忘れさせる。

 だが、その麻酔効果には強い中毒性があり、乱用につながる恐れがある。米国では、オピオイドの過剰摂取により1日当たり91人が死亡し、依存症の母親から生まれた赤ちゃんにまで健康被害が出ている。

 技術が進歩したおかげで、今では依存症についてかつてないほど多くのことがわかってきた。人間の体は、痛みに対抗するために少量のモルヒネを自然に作り出すことができる。自然界では、ヘビの毒にオピオイドと同じくらいの効果があると言われ、人類の祖先がアスピリンを使っていたという証拠も残っている。また、人間に似た神経構造を持つゼブラフィッシュを研究して、薬物中毒の解決法を探ろうとしている科学者もいる。(参考記事:「魚も薬物依存症になると判明、治療法研究に期待」「ヒトは体内で自らモルヒネ生成」

 イモガイの研究によって、オリベラ氏は、有害なオピオイドとは違う中毒性のない鎮痛薬を開発したいと考えている。そして、イモガイは「多くの可能性を秘めていると思います。新薬の宝庫です」と語った。

文=Elaina Zachos/訳=ルーバー荒井ハンナ

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