超深海に新種の魚、ゾウ1600頭分の水圧に耐える

生存できる限界の深さ?マリアナ海溝の水深8000メートルで

2017.12.01
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このクサウオは、体長は15センチほど。それでもゾウ1600頭分の水圧に耐えられる。(PHOTOGRAPH BY MACKENZIE GERRINGER)
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 この種はほぼ確実にマリアナ海溝に固有の生物とみられ、数も豊富らしい。2014年に、自律型の深海探査機のカメラに数匹写ったのを科学者たちが目にした。卵はやや大きめで、幅1センチ近くある。採取した個体をいくつか解剖したところ、餌に困ってはいなかったと考えられる。ゲリンガー氏は、魚の腹の中に細かい甲殻類が数百匹いるのを発見。庭にいるダンゴムシのような形だった。

 このクサウオは、深海生物と聞いて多くの人がイメージする姿とは違っているかもしれない。

 ゲリンガー氏は、「一般の人が思い浮かべるのは、チョウチンアンコウやホウライエソのような姿です」と話す。深さ2000~3000メートルの深海でよく見られ、黒い体で怪物のようなあごを持ち、発光器をぶら下げているような魚だ。「今回調査したような水深になると、魚の姿は大きく変わります。私たちが知っているようなうろこも、大きな歯もなく、生物発光もしません」(参考記事:「見えてきた!深海サメの光る理由」

 もちろん、この分野の例にもれず、確実に言えることは少ない。クサウオは世界で350種以上が知られているが、マリアナ海溝での最近の探査で撮影されたのは2種だけであり、今回記載されたのがその1つだ。科学者たちは、複数回の探査でPseudoliparis swireiを37匹採取。水深8178メートルの地点でも1匹を撮影した。

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 だが、ほぼ同じ水深で撮影されたもう1種の魚は、まだ1個体も捕まえられていない。その姿は英BBCの新しいシリーズ「ブループラネット2」にも登場しているが、体があまりに繊細なので、ある科学者が「水中を引きずられているティッシュペーパー」になぞらえたこともある。今のところは未記載の種であり、正式名はない。科学者の間では「極薄のクサウオ」と呼ばれるようになっている。

「見つけていないわけではないのですが」とゲリンガー氏。

まだまだ謎に満ちている

 深海にすむ生物の生態に関しては、「私たちはまだ『誰がそこにいるのかを見つける段階』にいます」とゲリンガー氏は言う。私たちが知らない部分が大きいのだ。(参考記事:「深海の最新写真10点、奇妙で神秘的なガラパゴス沖」

「環太平洋火山帯の周囲すべてに海溝がありますが、それらがどのくらい似通っているのか、どのくらい関連しているのかは、まだわかっていません」と、ゲリンガー氏。「海溝の上にある環境とどれくらい密につながっているのかは不明です」

 だとしても、そこに人間の痕跡がないわけではない。これほど未解明の海溝すら、人の影響と無縁ではないのだ。科学者らはこのほど、マリアナ海溝の最深部から採取した甲殻類から、驚くほど大量の残留性有機汚染物質(POPs)を発見した。分解中のプラスチックに由来する副産物であることが、ほぼ確実視されている。(参考記事:「世界最深のマリアナ海溝、映像をライブ配信中」

文=Craig Welch/訳=高野夏美

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