ハワイ固有の小さい蛾のグループ、絶滅の危機

ハワイ固有の植物が激減し、それに頼る固有の昆虫たちも消えてゆく

2016.11.25
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【動画】地球上のここでしか見られない、小さく美しい蛾たち。(説明は英語です)

 米国ハワイには、世界でこの島々にしかいない小さなガ(蛾)のグループがいる。まつげほどの大きさしかないものもいて、長年、見つけるのも研究するのも難しいとされてきた。

 だがナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラー、クリス・A・ジョンズ氏はその難題に取り組んでいる。たとえば彼は、この小さなガの幼虫が特定のハワイ原産の植物だけを食べることをつきとめた。幼虫は、自分が食べる植物の葉の内部組織に潜りこんで暮らすのだ。(参考記事:「コスタリカ 昆虫中心生活 第11回 葉っぱの芸術家たち」

 彼が調べているのはハワイ固有のフィロドリア属(Philodoria)のガで、これまで40種以上が確認されている。どれも近縁の仲間であるにもかかわらず、食べる植物は種ごとにバラバラで12もの科におよぶ。ところがそれらの植物の多くが、現在、絶滅が危ぶまれる状態にある。

「それぞれの種が特定の植物を食べる一方で、同じ属の仲間全体となると多様な植物を食べるというのは珍しい」と、米フロリダ大学の博士課程で生物学を学ぶジョンズ氏は言う。「なぜそうなったのかについては、よくわかっていません」

「生物にとって、そのように特定の植物だけを好んで食べるのは危険なこと」と語るのは、ハワイ大学の昆虫博物館館長ダニエル・ルビノフ氏だ。ルビノフ氏はフィロドリアの研究には直接関わっていない。(参考記事:「初の水陸両生の昆虫、ハワイで発見」

 ハワイでは、開発や土地利用の変化、外来種の侵入などによって常に自生の植物がおびやかされている。つまりフィロドリアたちにとって、食料となる植物が減っているというこどだ。中には自生する株が50本を切っている植物もある。

 これらのガを絶滅危惧種であると公式に認定するにはまだデータが十分ではないものの、ジョンズ氏のチームはすでにそうした認識で調査を続けている。「調査で見つける成虫の一部は、捕まえて観察した後は野生に返しています。我々は、こうしたガの多くはきわめて稀少で脆弱だという感触を持ち始めています」

失われた植物を求めて

 2013年にフィールドワークをスタートさせて以来、ジョンズ氏はハワイの主要な島すべてでフィロドリアの幼虫を発見しているが、一方で野生の成虫は30匹しか見つかっていない。調査チームはまた、100年以上にわたって目撃情報がなかったフィロドリア2種を再発見した。

「野外にいるガが飛び立ってしまえば、その個体は永久に戻ってきません。少なくとも人間の目にはもう見えません」とジョンズ氏。「たった30センチほど離れただけで、森の中で目に入ってくる雑多な背景の中にすぐに紛れてしまうのです」

 ハワイで危機にひんしている植物のうち9割が固有種で、探し出すのは非常に困難だ。そこでジョンズ氏のチームは、専門の植物学者や自然保護活動家の協力を仰ぎ、人の目の届かない場所に自生する植物を探しており、すでにいくつか成果を挙げている。(参考記事:「パンダ「絶滅危惧種」解除は正当か、専門家に聞く」

 モロカイ島の東海岸にそそり立つ高さ1400メートルの崖のふもとでは、2001年までは学者に知られていなかったハワイ固有のキク科の植物を探し回った結果、幼虫が葉潜りをしたと見られる跡を発見した。

 またマウイ島西部では、開発を免れた別の稀少なキク科の植物があり、それを食べる同じく稀少なガが見つかっている。「このガはここ以外では見つかりませんし、この植物は絶滅寸前の状態にあります」とジョンズ氏は言う。(参考記事:「卵を守るクモ、マウイ島」

発見されるガの新種

 こうした調査により、3年間で12種以上のガが新たに発見された。この先もさらに新種が見つかるだろうとジョンズ氏は言う。

 しかしこれらのガの仲間については、他のグループとの類縁関係や島にたどりついた時期など、まだわからないことが多い。こうした疑問の答えを見つけることが、フィロドリア属の役割を知り、この小さな昆虫を守っていくことにつながる。

「我々はすでに、ハワイに生息していたガを何種も失っています。原因はひとえに、宿主となる植物が減ったことに尽きます。最悪のケースは、自分たちが何を失ったのかもわからないことです」とルビノフ氏は言う。

「絶滅したリョコウバトのことは、誰もが知っているでしょう。しかし絶滅したハワイのガはゆうに500種を超えていて、それらがどんな姿をしていたのかは、誰も知らないのです」(参考記事:「リョコウバト、100年ぶりの復活へ」

文=Meghan Miner Murray/訳=北村京子

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