欧州発の火星探査機、着陸直前に通信途絶える

火星に起こる砂嵐の解明めざす

2016.10.20
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【動画】人が火星に立つ日
欧州とロシアの共同ミッションであるエクソマーズ計画は、やがて人を火星に送る計画の1ステップだ。(解説は英語です。画面右上の「CC」で英語の字幕を出せます)

 欧州とロシアの宇宙機関が火星へ送り込んだ着陸機が、表面への着陸に失敗した可能性がある。

 火星の大気などを調査する周回機「トレース・ガス・オービター」は、10月19日、無事に火星の軌道に入ったと当局が発表していた。しかしその後、着陸機「スキアパレッリ」が火星着陸まであと1分のところで通信が途絶え、欧州宇宙機関(ESA)は無事着陸したことを示す信号を確認できていないという。

 心配されるのは、2003年に着陸失敗に終わった、同じESAの着陸機「ビーグル2」の再現だ。現在当局は、他の火星周回機を含む複数の情報源からデータを集めて検証し、「スキアパレッリ」の状態を確認する作業を進めている。(参考記事:「火星で行方不明の探査機が11年ぶりに見つかる」

 失敗したとすれば、大きな痛手になる。着陸機「スキアパレッリ」は、ESAとロシアの宇宙機関ロスコスモスが共同で行うエクソマーズ(ExoMars)計画の一部だ。スキアパレッリの主な任務は、降下・着陸技術のテストだった。ESAとロスコスモスは、2021年に火星に送り込む予定の探査車でこの技術を使おうと計画しているためだ。(参考記事:「MAVENに続け、各国の火星探査計画」

 スキアパレッリが着陸に失敗した場合、技術的な試験に次ぐ第2のミッションも果たせなくなる。火星の砂嵐の調査だ。

 NASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者、マイケル・スミス氏は、「塵の粒子は非常に小さいので、どんなところにも入り込みます」と話す。「火星探査車の写真を見れば分かりますが、いずれも汚れています。ソーラーパネルも塵で覆われますが、探査車が稼働を続けるためには最低限の電力が必要です」

 しかも、砂嵐は電場を作り出す。このような地球以外で起こる旋風が通信を妨げたり、電子機器を故障させたりする可能性があるのか見極めるため、科学者たちはこうしたエネルギーの測定に強い関心を抱いている。

厄介な砂嵐

火星北半球のアマゾニス平原を踊るように横切っていく塵旋風。探査機「マーズ・リコネサンス・オービター」がとらえた。(PHOTOGRAPH COURTESY NASA)
[画像のクリックで拡大表示]

 火星の季節は地球上のそれとは異なる。火星の自転軸の傾きは地球よりわずかに大きく、軌道はずっと長いためだ。火星の1年間では、太陽までの距離は約2億600万キロから2億4784キロまで変化する。

 ダストデビルとも呼ばれる小規模な塵旋風は1年を通じて起きているが、広範囲にわたる嵐は、火星が太陽に最も近づき、受けるエネルギーが40%増えるときに発生する。このエネルギーの大半を受け取るのが、火星の南半球だ。(参考記事:「ヘビのような火星のダストデビル」

 強い太陽光が地表に降り注ぐと、地表近くの空気が暖められて上昇する。風が吹き始めて砂粒を巻き上げ、千分の数ミリという非常に細かい塵の粒子が空中に舞い上がる。

【動画】探査機の墓場
人類は50年に渡り、探査機や探査車を打ち上げて火星の謎を解明しようと試みてきた。(解説は英語です)

 NASAジェット推進研究所の惑星科学者、ジェームズ・シャーリー氏は、「軽くてふわふわした細かな塵の粒子が一度大気中に浮き上がると、なかなか降りてきません」と話す。

 火星の大気は薄く、地球の海面上に比べると1%ほどしかないため、塵を大量に含んだ風はそれほど強い威力になるわけではない。スミス氏は、映画「オデッセイ」で宇宙飛行士のマーク・ワトニーが砂嵐に襲われ、火星に取り残されるはめになったのに触れて、「ロケットを吹き飛ばしたり、アンテナやなんかが宇宙飛行士に刺さったりするようなことにはならないでしょう」と話す。

 それでも、風速は時速数十キロにもなり得るため、視界を妨げたり、あるいは機器の故障につながったりするかもしれない。「動き回る機械には、必ず接合箇所があります」とスミス氏。「それらをすき間なく密着させておかないと、機器の中に塵が入り込んでしまいます。そのような状態は望ましくありません」

 塵が鏡やレンズを覆い、科学機器をだめにしてしまうこともある。2007年の嵐では、探査車「スピリット」と「オポチュニティ」の熱赤外線分光器が壊れ、地表の組成分析を行う機器の一部が取れてしまった。

 最も懸念されるのは、塵がソーラーパネルを覆ってしまうことだろう。スミス氏によると、2007年の砂嵐に遭った「スピリット」と「オポチュニティ」は、稼働し続けるために太陽光で発電するヒーターが必要だったため、活動も短期間に設定されていた。いずれも砂嵐の中を持ちこたえたが、「今も稼働中のオポチュニティが再び同様の砂嵐に襲われれば、老朽化もあって大きなダメージになるでしょう」とスミス氏は言う。

次ページ:間もなく嵐が発生か

人類の火星への旅は、もはや夢物語ではない――。
ナショジオがお届けする火星の最新情報を、こちらでどうぞ!
マーズ 火星移住計画 特設サイトへ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加