米スペースX、壮大な火星移住計画を発表

2020年代に有人飛行、2060年代には100万人移住も

2016.09.30
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実現への道のり

 自立した第2の居住地を太陽系の中に作るというマスク氏の最終的な構想は、壮大で高遠だが、決して独創的というわけではない。長きにわたって作られてきたSFとの違いは、マスク氏の計画は本当に実現可能かもしれないという点だ。ただし、理想とする水準までコストを下げられればという条件がつく。

 IACでの委員会で、NASAのチャーリー・ボールデン長官は「事業家の皆さんは、超音速の逆推進など、我々が考えながらもまだ準備ができていない問題を検討できています」と評価した。

「数字、金額、スケジュールその他について粗探しをすることは可能だと思います。しかし、彼が今日、国際的な場に出てきて、すべて率直に発表したという事実を見失ってはなりません」と先のブラウン氏は付け加えた。「そのことにすがすがしさを覚えました」

 だが火星が実際の行き先になるには、輸送費用を約20万ドル(約2000万円)にまで下げる必要があるとマスク氏は言う。米国の平均的な住宅価格と同程度だ。それでも、現在見積もられているコストより大幅に安いのだという。

 マスク氏は、自社だけで全て成し遂げられるとは期待していない。「政府や民間産業との、何らかの相乗的関係が不可欠」と、ハワード氏に語っている。

「この分野の大きな目標に向けられている民間の活力からも、政府資源からも、できる限り多くを得たいと考えています。どちらかの資金源がなくなっても事業を続けられるように」

2014年5月、「ドラゴン2」を発表するイーロン・マスク氏。(PHOTOGRAPH BY JAE C. HONG, AP)
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 しかし、課題もある。異なるマネジメント手法やリスクの引き受け能力、資金源をまとめること、古い画一的な開発ロードマップに従っていることなどが立ちはだかるのだ。

 どうすれば、それらすべてがうまく機能するのだろうか?「容易ではないでしょう」と話すのは、ジョージ・ワシントン大学の名誉教授で宇宙政策に詳しいジョン・ログスドン氏だ。「痛手を負うこともあるはずです」

 例えば、2020年代に火星に到着するには、スペースX社は技術面で多少の活を入れられる必要があるだろう。シミュレーションで使われた巨大なロケットは、現時点で同社が持つどのロケットよりはるかに強力だ。ファルコン・ヘビーの名で知られ、火星への大きな足掛かりとなる未来型のロケットだが、最初の打ち上げはもう何年も延期されている。

 マスク氏自身もスケジュールについては「良く言っても不透明」と認めているが、このような遅れは、宇宙政策の専門家がマスク氏の計画に懐疑的な理由の1つだ。

「過去の実績に照らせば、『そうだね、彼は今まであらゆる目標期日を達成できなかったけど、今度は大丈夫だよ』とは言えません」とログスドン氏。「ですから合理的な姿勢としては、『実行できれば信じる』ということになります」

 人類が本当に火星に行くことができたら、その快挙ではずみがつき、さまざまな発展を後押しするとマスク氏は考えている。かつて栄光や金、香辛料を求めた冒険家たちが、造船技術や世界の産業を発展させたのと同じだ。

 やがては、こうした努力により火星はSFの世界から抜け出し、困難と危険でいっぱいの世界から、マスク氏も含めた人々が生活を楽しめる世界へと変わるだろうというのが、彼の考えだ。

「火星は素晴らしい行き先になるでしょう」とマスク氏は言う。「無限の可能性がある惑星になりますよ」

人類の火星への旅は、もはや夢物語ではない――。
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文=Nadia Drake/訳=高野夏美

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